出版社内容情報
詩が倫理や政治そのものであった唐代中期に,豊かな幻想性をもって,男女の愛をうたい自然や風俗を写した李賀(七九一―八一七)は,李白が天才,白楽天が人才とよばれるのに対し,古来,鬼才とよばれた.その鋭い言語感覚と多彩な内容の詩は,近代詩に通ずるような新しさがある.二七歳で夭折した李賀が残した二四一首から六七首を精選.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
27
「およそ「写実をもって良しとする」中国文学の世界にあって、李賀の作品はそのまったく逆に幻想を志向する。「創作にあって踏みならされた道筋をことごとく無視した」とは、晩唐の詩人杜牧の評である」とか。中国にはこんな夭逝の鬼才がいたんだね。杜甫や李白や蘇軾とはまるで違う世界だ。2017/08/29
双海(ふたみ)
23
李白が天才、白楽天が人才と呼ばれるのに対して、鬼才と称せられた李賀。豊かな幻想性をもって男女の愛をうたう。漢詩・・・と言っても、なんだか別世界を見たような気がしました。2015/02/16
misui
18
「鬼才」李賀。漢詩といえば「月下独酌」みたいなものをイメージするが、李賀の詩はそれとは明らかに趣を異にする。神韻渺茫たる詩世界には神仙が遊び、時に鬼さえ姿を現す。「恨血千年土中碧」(恨みこもるわが赤き血潮は千代ののち碧玉と化して掘り出されん) デカダンスを先取りしたかのような夢幻の境地には魅了された。ぜひ愛読していきたい。2013/06/23
BIN
8
唐中期の天才詩人で「鬼才」と謳われた李賀。といっても中国の鬼は亡霊や物の怪で、それに関して詩才を発揮した意味だそうだ。それも有名な作がそれなだけで、亡霊ものの作品が多いわけではないとのこと。李賀は変化に富んだ自由な発想があり、造語がかなり多い。官不来の訳はなんだろう、この軽さは。秋来は逆にちょっと重い。2018/07/19
内藤銀ねず
6
長い漢詩の歴史の中でも、とりわけ幻想的な詩を残した夭折詩人。塚本邦雄が何度もこの詩人のことを書いていて、いつか読みたいと思っていたところに岩波文庫の初版が出たので、そりゃあ飛びつきましたとも。正確な訳よりも、原詩のイメージを大切にした「意訳の詩」を試みているのが、私は好き(そこは好みが分かれるでしょうけれど)。日本人は夭折詩人にとことん弱い。山田かまちも、尾崎豊も、笹井宏之も、私たちの身代わりになったわけではないけれど、彼らが永遠に若いまま記憶されることは…このへんでやめておきますw