出版社内容情報
露伴作品中最大の長篇である現代小説で,しかも構想のなかばに達せずして終わった.好学の青年の遂げ得ざる恋愛を中心に,男の友情や遠洋漁業の計画や投機の勝敗や,女の情熱や可憐な少女や憂い多く知慧深き美女を配して展開する,写実的手法による浪漫的作品である.東京とその附近の風俗画的描写や,いきいきした会話もまた美しい.解説=塩谷賛
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆうきなかもと
5
キャラ設定が明確。 現代小説と異なるのは、セリフの部分は口語体で、地の文が文語体の講談調なところ。テンポが凄まじくよい。 旧仮名遣いと漢字の旧字体で書かれている。多くの人にとっては、読みにくいかもしれない。 例えば「恋で死ぬものは一人も無く、皆心気(しん)の疲労(つかれ)に堪(こら)え切れ無くなつて、おのが魂魄(たましい)を砕いて仕舞ふ」などは、「恋、気、労」が旧字体の漢字で書かれている。 内容は恋愛がメインのテーマだが…主人公の恋した相手は、病気で寝込んだまま、ほとんど登場しない…後編が気になる2015/11/12