出版社内容情報
二十の顔を持つ謎の盗賊・怪人二十面相と名探偵・明智小五郎,助手の小林少年との知恵と知恵を賭けた対決が繰り広げられる。勝負はいかに!探偵小説の文豪・江戸川乱歩の少年物の代表作.(解説=佐野史郎:解題=吉田司雄).
内容説明
昭和の日本を震撼させた怪人の犯罪予告。オヤクソクノモノ、ウケトリニユク、二〇。明智小五郎と小林少年ら少年探偵団が怪人二十面相と対決、大活躍する乱歩の児童向け作品。シリーズ第一作「怪人二十面相」と戦後の乱歩復活を告げた「青銅の魔人」を収録。
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- 評価
稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
みつ
26
昭和11年(1936年)の怪人二十面相初登場の作品と戦後彼が登場する第一作。こういう作も岩波文庫に入ってくるのは驚き。幻想的な作品或いは謎解き主体の初期短篇が乱歩の本領とはいえ、二十面相と少年探偵団は懐かしい限り。明智小五郎も怪人二十面相あっての名探偵であり、「君」「ぼく」で呼び合う関係も互いの存在が不可欠であることを示すよう。読者も探偵側の勝利に溜飲を下げながらも、二十面相の復活を期待してしまう。二作の間には戦争を含む十数年が横たわり、後者では時代色も織り交ぜながら、探偵、怪盗、小林少年も歳を取らない。2024/12/10
佐倉
13
「子供の頃の読書と言えば」で良く名前が上がる少年探偵団シリーズだが小学生の頃は全く刺さらなかった。良い子の皆さん、みたいに呼び掛けられる感じがクサいというか座りが悪く感じたのだとと思う。今となってはこの時代がかった、いかにも少年向け、という雰囲気も味に感じられる。明智と二十面相のトリック合戦はどちらが明智でどちらが二十面相か分からなくなり幻惑されそうになった。誰が探偵かを推理させるタイプの乱歩作品を先に読んでいただけになおさら。明智=二十面相説とか与太話と思っていたが、そう考察したくなる気持ちも分かる。2023/07/29
LUNE MER
13
戦前に大人向けに書かれた国内ミステリーの黎明期の作品(米英の本格を舞台を日本に移しただけでパクったようなやつ)なんかより余程面白い。僕らの世代では小学校の図書館にポプラ社の全シリーズが揃ってて読書原体験になったもんだ。大人になって読み返すと、時代を感じさせる描写も多く、味わい深い。2019/08/30
軍縮地球市民shinshin
10
小学生の頃ポプラ社版を夢中になって読んだが、僕はどちらかというと大人向け小説のリライト版の方が好きだった。だから少年探偵団シリーズは意外と読んでいない。それでも第1作「怪人二十面相」は当時読んだ。本格ミステリーを志向していた乱歩らしく明智が謎を解いて周囲をアッと言わせる場面はある。「青銅の魔人」は戦後第1作。こちらは初読。チンピラ別働隊結成の話だったとは。戦災孤児を小林少年が上野公園に行って結成させたとは。この時の別働隊は明智の計いで進学したり就職したりしたらしい。シリーズが続くとまた登場する。2019/06/02
Nemorální lid
5
当著の解題に於いて、江戸川乱歩がイメージ像を作りあげる際に意識したルパンと二十面相の差異を「国家に対する態度」としていたのが何とも興味深かった。 『義賊であった「怪盗」ルパンが「怪人」二十面相へと姿を変えたとき、「怪人」は国家を脅かす真逆の存在として読者の前に登場したのだ』(p.406) また、二十面相の構想に「探偵奇譚ジゴマ」(明治四十四年)「ファントマ」(大正四年)と言った無声映画とも関わりがあると知る事も出来た。 「怪人二十面相」の何たるかを知ることの出来る素晴らしい一冊であるのは間違いないだろう。2018/01/28