出版社内容情報
広く深く学問を楽しんだ哲学者河野与一(1896-1984).その旺盛な知識欲の対象は「欠伸がうつる」「プラトニック・ラヴ」の典拠にも及ぶ.話題の豊富さと語り口の軽妙さから長く親しまれた『学問の曲り角』の新編文庫版.
内容説明
「遊びながら哲学をしている」と哲学者田辺元に言わせるほど学問を楽しんだ河野与一。その該博な学識と旺盛な知識欲の対象は、「欠伸がうつる」の典拠や「プラトニック・ラヴ」の由来、といった問題にも及ぶ。話題の豊富さと語り口の軽妙さから長く親しまれた『学問の曲り角』の新編文庫版。
目次
アリストテレスの欠伸論
源流に遡る―プラトニック・ラヴ考
ライプニツはモリエールを観たか
ベルクソンの洗礼
ローマ時代の弔辞
古代における慰め
ローマの饗宴
古代に於ける虱
弁論術師の月謝
貨幣と独裁者〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そんれい
18
明治29年生まれの哲学者、翻訳家であり、岩波書店の顧問も勤めた。 「十数ヵ国語を自在に操れる語学力と明晰な理解力、抜群の記憶力をもち、人の何倍もの努力家であるが、他人の思想には寛容で、日頃蓄えておいた有り余るほどの知的財産を惜しげもなく人に施しそのために自分の貴重な時間と労力を費やすことを少しも意に介さなかった」(あとがきより)「要するに死ぬまでの間の遊びだよ」一流の人の考えには到底およばない😅2020/09/27
はら
16
その豊富な知識ゆえか、1つのことについて話の内容が二転三転しがちなので、好きな人には好きなのかもしれないが自分には正直退屈だった。しかし、ギリシャやローマの抽象的じゃない、彼らは何を食べていたのかといった世俗的な知識やプラトニック・ラヴの語源などが語られていて、人にとっては面白い本かもしれない。2018/07/10
壱萬参仟縁
11
プラトニック・ラヴとは女の人を尊敬しつつ肉の交渉を外にしてこれを愛することだとすればそれはプラトーンのうちには見当らない(33頁)。プラトーン風とのこと。本は買ってきただけではだめだ。読まねばダメだが、読み出すと、形としての本は消え、もの(傍点)になってくる(173頁)。マスターするということか。読者と本の主格転倒である。本は使いこなすべきであり、使われてはならないな。自戒を。2013/08/28
Ex libris 毒餃子
9
大学生くらいのときに読んだ本ですが、ある程度の知識がアップデートされたので再読してみました。これくらい外国語と哲学に明るければ、学問が楽しいだろうなあと思います。業績としてはベルクソンの翻訳が挙げられると思います。自書があまりないようですが、教育と外国文献の翻訳で活躍するタイプもいるのでいいのではないでしょうか(最近の文科省の政策下の大学では活躍できないかもしれません😢)2024/09/08
M
7
日本語文献に乏しい当時において、例えばプラトニックラヴなどの、学問の周縁にあるようなテーマの幾つかを海外の原典から忠実に語義の意味、背景から連想している。大学院は日本語文献がない領域なので、原典に配慮しつつ英語の認知メカニズムの側面も意識したい。英語もまた西洋文明の母体であるギリシャの影響を受けており、theはギリシャ語で「理論」を意味するtheoryの始めのtheと同じで「見る」という意味があるという文章を目にし、日本人研究者はthe~は苦手だが、a~を探すのに適しているという新聞記事の内容が浮かんだ。2021/01/25