出版社内容情報
熱い太陽の下,牛と人との生死を賭けた決闘に血を湧きたたせるスペインの人々.享楽と虚飾の交差点モンテカルロ.ポルトガル,イタリア,スイスを経て,海路帰途につく谷夫妻.いよいよ旅も大詰だ.(解説=尾崎秀樹)
内容説明
熱い太陽の下、牛と人との生死を賭けた闘いに沸き立つスペインの人々。享楽と虚飾の交差点、モンテカルロの賭場にたたずむ謎のマダム。リスボンの波止場にこだまする「しっぷ・あほうい!」の叫び。秘密を載せて走るイタリアの夜汽車。雪のサン・モリッツに展開する恋愛ゲーム。旅も大詰、谷夫妻は海路日本へ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
9
林不忘、牧逸馬、そして谷譲次と三つの筆名を持ち、多くの作品を残しつつ、35歳にして夭折した異才長谷川海太郎。頭よりも早く筆が進み、とかく見聞きした西洋の風景を乱雑に書き連ねた本書は、昭和四年に刊行されたことを感じさせない旅行記である。モダニズムというタームを飛び越えた言語芸術としての独自性もあるが、何より読んでいて面白い。西洋名所巡りなど眼中になく、彼が描くのは市井の人々の生活である。演劇や書物、恋愛から、性産業といった下世話なものまで、兎に角見て参加して書く。素晴らしきジョウジ・タニイの諸国漫遊記哉!2013/05/08
ヨーイチ
6
こういう収穫は青空文庫ならでは。巡り合わせを感じる。古い物だから面白い。文章もモダン。2011/11/04
牛歩
4
昭和初期の1年にわたる(主に)欧州旅行記。けっこうお大尽な旅だけど、裏町歩きとかやっててチャレンジャー。ホントかよ、と思ってしまうような話もある。気になったのは、途中、同行しているはずの夫人が登場しなくなること。解説では時代状況で片付けてしまっているけど。スイス滞在のくだりで“カアリング”が出てきたのは驚いた。この時代で、この競技を取り上げたのは珍しいのでは。文章はぽんぽんと歯切れ良く、特に表現の豊富さには目を見張る。「旅行は確かに一つの技術である」(P369)は名言。2010/05/26
kotoriko
2
モダン2008/07/03
ともゑ
0
旅も後半!スペイン、モンテカルロ、ポルトガル、イタリア、スイス、帰国へ。勢いある文体は下巻でも衰えずエキサイティング!100年程前の欧州の雰囲気とモダニズム文学を体感しよう。2013/05/27