出版社内容情報
旅は,この散文的な近代にのこされたただひとつの魔法だ.大陸横断の国際列車に乗り込んで,いざ,世界へ! 異才谷譲次(1900-35)が満杯の好奇心を携えて,地平線の彼方を闊歩する.人生の縮図ロンドン,静寂の北欧,パリの猥雑-そこに映し出されるのは,昭和初年の日本と日本人の姿でもある.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ハチアカデミー
20
時は1920年代、日本人の作家が西洋を旅して書き連ねた現地報告。英語・仏語を織り交ぜた文体は早すぎたライムと言えるし、ただ現地を訪れるだけでなく、しっかりと現地人と交流をしているところも、同時代に西洋を訪れた作家とは一線を画している。そして何よりも、その異常に高いテンションに圧倒される。「OH! Glory! 何という刹那的な煽情(センセイション)! 刺激・陶酔・優越感・魘されるこころ――このGRRRRと、そしてBUMP!」これはジョジョですか? Gガンダムですか? 圧倒的な文体を堪能。下巻に続く。2013/05/04
ヨーイチ
8
青空文庫にて読了。紀行文とも言えるが、小説?滅法面白い。満州からシベリア鉄道を使ってヨーロッパへ。満州・新京の風俗、シベリア鉄道の乗客達、イギリスのダービー、カイゼルが出てきたり?仕上げは魔都巴里。見える物の名前全てを並べ立てた独特の描写が面白い。上巻最後の巴里編は必見。声を上げて笑ってしまった。古い映画の様な趣。丹下左膳の作者はハイカラな若者でも有った。2011/08/25
モゥビー・ディック
2
諸外国語がアルファベットで練り込まれた、ロッケンロールで破天荒な日本語が炸裂する特異な散文。冒頭の「がたん!」のフレーズで幕を開ける最高のオープニング。1920年代のヨーロッパの空気が「翻訳」されて、生き生きと2013年の読み手に響いてくる。ロンドンからパリに移動する飛行機の描写が特に印象深い。窓が開いたんだ!様々な都市のエピソードが語られるが、巴里の話が白眉。2013/02/25
kotoriko
2
新感覚主義の人たちよか渋いの書けたんじゃないだろうか、この人。2008/07/03
ともゑ
0
今から100年近く前に著者が欧州旅行をした話。しかしその語りはかなりテンション高い!今の感覚でも驚く文体。旅行自体は長距離移動は船•汽車メインの時代だし現地の観光や交流も楽しんでるから結構ゆったりしてるはずなのに物凄いスピード感、躍動感。上巻は旅の前半、日本出発〜ロンドン、フィンランド、パリ。良い旅を!2013/04/21