出版社内容情報
戯曲のもつ本質的な要素として「語られる言葉の美」を強調した岸田国士(1890‐1954)は日本の新劇界にもっとも強い影響を与えた.出世作「古い玩具」は日本のふるい空気をのがれてパリに遊学した一青年の異国の女とのはかない恋を微妙な心理の交錯の中に詩的に描いた佳品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
308
著者のデビュー作である表題作を含む6つの戯曲の小品を収録。「古い玩具」は、個を保てない因習的な日本を脱出してパリに行ったものの、今度は逆に肉体的、文化的双方のコンプレックスから個でありえない主人公の苦悩を描く。なんと大時代なと思えば、1923年の作。著者は萩原朔太郎らとほぼ同世代であるなら、まず無理もないところか。劇はいずれも登場人物が少なく、基本的には2人の対話から、それぞれの人物たちを浮かび上がらせるといった手法。葛藤が、内面化され顕わでないあたりが現代につながる近代劇たる所以だろうか。2018/02/04
ひつじ
9
(写真を撮られながら)「僕の背中は、よほどフォトジェニックと見えるなあ」というセリフが好きすぎる。爆笑していた。それはともかく、全体は近代という時代の日本といった感じだが、男女のゆくえ、夫婦の問題など家庭がテーマであるものばかりだったにも関わらず、何故か楽しんで読めてしまった。男ってこういうものよと言ったような、昭和を想起させる古びたつまらんジェンダー観にも関わらず。凡庸でつまらないのにテンプレのような使い古したつまらなさがないのが不思議だ。ほんの少し、それだけなのだがどこかにリアルがある。表現だと思う。2021/10/21
ヨー
8
内「紙風船」を目的に再読。今度、この作品を使って舞台を作るので早めにチェックしときました。2019/03/09
kuboji
1
時代は感じるけど、中身はまったく古くない。すごく余白があるからいろいろな解釈ができそう。さりげない会話がうまくて楽しく読めたし、想像がふくらんだ。舞台で見たい。2015/10/21