岩波文庫
鱧の皮 - 他五篇

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  • サイズ 文庫判/ページ数 253p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784003111314
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

上司小剣(1874‐1947)は自然主義の流れを汲む写実作家として世に認められているが,その優れた細かい描写力は,とくに情痴の世界の生態を描いてあますところなく,多くの佳作を残した.大正3年に発表され当時大いに称讃を博した「鱧の皮」は,その会話が実に巧みな大阪弁によって書かれている.小剣独特の風格をもっともよく伝ええた傑作であろう.解説=宇野浩二

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ハチアカデミー

8
C いろんなフェチ作家がいるが、本作は「舌」フェチ作家である。突然女に嘗められる描写が入り、解説の宇野浩二をして「変態的」と言わしめる。大正~昭和初期に活躍した上司小剣の短編集。関西弁の会話文のリズムと、やや下層で生活する人々の鬱屈や日常を描写する筆致を楽しむ。表題作は、ろくでなしのごろつきが鱧の皮が好きだというどってことない作品だが、なぜか心に余韻を残して終わる。個人的には年老いた父の再婚を描く「父の結婚」が良い。味わい深い作品に突如「舌」とか「腋臭」が出てきて至極違和感がある。その違和感が魅力なのか。2012/10/26

零水亭

4
「鱧の皮」新潮社の日本文学全集で初読。美しいかどうかは別にして、味わい深い作品群と思います。

緑色と風

3
織田作之助著「夫婦善哉」のモデルになったとされる「鱧の皮」。文体が時代の変化を感じさせるのとは対象に、ダメな男と、支える女の関係は変化がないというのが不思議。こういう話を子供の頃、近所の人と母がうわさ話をしているのを聞いた覚えがある。東京では男の出世話や女の聡明さが似合う。でも、関西はこいういうどう考えてもこれはないやろうという男女の話がちまたに溢れ妙に心に沁みてしまう。女性がそれでも幸せと感じるのなら、まあいいか!

getaya

1
☆☆☆☆2017/06/05

鷹ぼん

1
★★★★ 書かれた頃の大阪・道頓堀界隈の賑わいがよくわかる。そして、昔ながらの大阪弁の雰囲気もよくわかる。戦前の大阪弁をよく伝える作品として、貴重な作品だろう。放蕩三昧の婿養子と婿養子の奥さんであるお文の対極が土台にあるのが「上方文学」らしいし、浄瑠璃っぽくていい。短編でストーリに起伏がないので、難しいと思うが、この小説も『夫婦善哉』同様に人形浄瑠璃にできないか。 表題作もさることながら、『ごりがん』もよい。やっぱりこちらも、文楽によくあるダメ男だけど憎めない大阪のアカンたれ。自分もそうかもね(笑)。2009/08/10

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