出版社内容情報
連作十篇からなるこの作品は,まさに明治以降の近代忠臣蔵劇において頂点にたつ傑作といえよう.堅固な戯曲構成,綿密な史実考証,重厚な科白廻しにのって論理と論理がぶつかりあい,力強い緊張感を生む登場人物の対話.独特の風格が全篇に漂い,血のかよった人間のドラマが展開する.昭和九―十七年作. (解説 真山美保)
内容説明
作家であると同時にまた、西鶴語彙研究・江戸地誌研究の第一人者であった真山青果(1878‐1948)は、『元禄忠臣蔵』連作の構想にあたり、とりわけ徹底した資料調査を行なったという。その周到綿密な史実考証・言語考証が全篇に独特の風格を漂わせ、そのなかで血のかよった人間のドラマが展開される。
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稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヨーイチ
13
世話になった兄弟子曰く「元禄忠臣蔵は義士物の決定版である」らしい。確かに時代考証の綿密さ、歴史劇風な高尚さが漂う、日本の近代戯曲の代表作であろう。通しで見るも良いが、人が揃わなくてガッカリする確率も高そう。一つ挙げれば「お浜御殿」。良く掛かるのは矢張りいい出来だから。昔見た孝夫と富十郎の舞台は墓場まで持って行きたい程であった。青果物は台詞が立たなくては話にならない。先年仁左衛門と歌六で見た。「富森助右衛門、敷居を超えまするぅ」の件は嵌ったら感涙物。吉右衛門さんので掛からないかなぁ。平成26年の段階である。
壱萬参仟縁
13
泉岳寺。 都営地下鉄を思い出した。 不破曰はく、閻魔大王が登場(182頁)。 ようやく、何が面白いのかが見えてきたか。 禅関曰く、「世や命咲く野に枯るる世や命。 世や命咲く野に枯るる世や命」(191-2頁)。 この辺りは染み入るかな。 大石最後の一日で、 伝右曰く、「浪人の上に身体は利かず、 貧に攻められ、飢えに泣き、日夜苦患(くげん)の 日を送りまする(云々)」(330頁)。 2014/04/15
puspitasari
3
やっと読了。(実は上巻はまだ読み終わっていない)歌舞伎でまだ観たことのない「大石最後の一日」が俄然観たくなる。もちろん大石は仁左衛門さん、磯貝は愛之助さんで(^0^)/2012/05/24
たいけい
2
赤穂義士が吉良上野介の首級を上げる直前から切腹に赴くまでが中心。血生臭い場面を敢えて描いていないのは、大石内蔵助とその周囲の人々の心情に焦点を置いているからだろう。それは単に哀れとか悲しいというだけに留まらない。作中で内蔵助が語る「初一念を貫くは難し」ということを表現しようとしているからだと思う。それを真山真保の解説と発表誌一覧によって気づいた。作中一番最後になる「大石最後の一日」が一番先に発表されているのだ。『元禄忠臣蔵』は単なる復讐譚ではない。武士の誠を尽くす姿を以て為政者の理不尽に抗議しているのだ。2020/10/05
紫暗
2
大石内蔵助の内心を過度な表現を使わずに繊細に表現しているところに感服しました。史実ではどうあれ、リアリティある魅力的な物語に仕上がっていると思います。浪士達の行動にも微笑ましいところあり、さもありなんと思わせるところありで飽きることがありませんでした。脳裏に舞台と役者が自然と浮かんでくるような細かな表現に脱帽です。2012/12/14