出版社内容情報
舞台は日中戦争下の大阪.市役所に勤め部落更生事業に打ちこみつつ左翼運動に関係する矢花正行と,政治運動から脱落した友人大道出泉を対極の主人公として,政治関係や社会関係,友人・女性・家族関係等が細緻に描かれてゆく.全体小説をめざし,二十三年の歳月をかけて完成した八千枚の長篇. (解説 篠田一士)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
格
3
(5巻の感想として)矢花正行と大道出泉の道は交わるかのようにみえて決して交わることはなく、それぞれの終わりを迎える。「炎の場所」と名付けられた終章はいわばサスペンスとアクションの連続で緊張感も高まりに高まっていくのだが、その終わりについてはどうだろう。特に正行の側は「えっ、これで終わり?」と呆気なく物事が片付いてしまう。ここのところをどう考えるか。本作が目指した理念に基づくと、このような終わり方になるということだろうか→2024/10/19
嵐 千里
0
最終章「炎の場所」は一気呵成に読める。しかし、この章にたどり着くまでがとにかく長い。延々と張り巡らされた伏線な訳だが、これほど筆を費やす必要があったのか大いに疑問。 全体小説の試みとの触れ込み、谷垣純一郎賞受賞作(あの『世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド』『万延元年のフットボール』、そして『たった一人の反乱』)でなければ付き合いきれない(8カ月掛かった)2024/07/23