出版社内容情報
日清戦争後の資本主義の発展とともに急速に寄生的ブルジョアジーが成長した日本社会.そこに生きる政治家,官僚,実業家,宗教家,教育家から新聞記者や出版屋にいたるまでの各階層の腐敗堕落の種々相を諷刺的にスケッチした中・短篇集.さながら,文芸批評の先駆者魯庵の手になる明治社会の一大滑稽絵巻といえよう.解説=猪野謙二,内田巌
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
猫丸
10
上巻よりも社会正義を追求する筆鋒が鋭くなっている。明治末期、社会の表舞台にて活躍する政党人、大商人、顕官、学者。みな性根が腐っておる。人倫というものを何と心得るか。魯庵氏、怒っているのである。お気の毒だが、著者の言わんとする主張よりも文章そのものの雰囲気の方に目が行ってしまう。この時期の文章って良いなあ。「一口に妾手掛けと廉(やす)っぽく云うが、絹布纏み(おこさまぐるみ) でゾロリとしてゐられたら夫人(おくさま)と異(かわ)つた事ァねエやナ」とは男爵家へ奉公に出した娘へかける母親の言葉。リズムがいいやね。2022/12/03
にゃん吉
0
下巻は、因循な親族と新しい時代の考え方の主人公の軋轢といった設定が多いです。「破垣」が顕官(解説によれば、伊藤博文の女婿)の醜聞をモデルとしていて、当時問題となったようで、付録や解説で、経緯等がふれられています。醜聞記事は遍く流通させられる現代の方が、幾分か立派というところでしょうか。