出版社内容情報
鯛の骨たたみにひらふ夜寒かな――室生犀星(1889-1962)の文学は、詩、小説、随筆と多岐にわたる。創作の原点には俳句があった。その句は、人と自然への細やかな情愛、日本語の質朴な美しさに満ちている。「ふるさと」を詠った詩人のもう一つの詩である俳句から、八百数十句を精選。犀星の俳論、室生朝子の随筆も収載した。
内容説明
鯛の骨たたみにひらふ夜寒かな―室生犀星(1889‐1962)の文学は、詩、小説、随筆と多岐にわたる。創作の原点には俳句があった。その句は、人と自然への細やかな情愛、日本語の質朴な美しさに満ちている。「ふるさと」を詠った詩人のもう一つの詩である俳句から、八百数十句を精選した。犀星の俳論、室生朝子の随筆も収載した。
目次
俳句(明治三十七(一九〇四)年
明治三十八(一九〇五)年
明治三十九(一九〇六)年
明治四十(一九〇七)年
明治四十一(一九〇八)年 ほか)
散文(序文(『魚眠洞発句集』)
序(『犀星発句集』野田書房)
序(『犀星発句集』桜井書店)
序(『遠野集』)
俳道 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あ げ こ
16
何という素朴さ、淡さ、澄みやかさ。小説なり随筆なりのあの偏執狂めいた視線と手のじっとりと絡み付くような粘っこさと陰湿さと執拗さはいずこへ…。自分も〈さらりとしている〉と感じた類。犀星の小説や随筆の持つ粘着性と言うか、ぬめぬめと湿ったようなあの執拗さはここにはないように思われる。あんずの句が好き。〈あまさ柔らかさ杏の日のぬくみ〉〈あんずあまさうなひとはねむさうな〉〈あんずほたほたになり落ちにけり〉…小説と同じ手で書かれたものであることだけは確かであると、あんずの句によって何となく思う。自然物との静かな交歓。2022/12/13
ゆづき
2
「春愁に堪へず笑ひこかしたり」という句が好きです。2023/02/21
はるたろうQQ
1
犀星がまずは俳人として文学の道を登り初めたのは知らなかった。犀星にとっての俳句については議論はあるが、良い句が見付かれば満足。「尻なでる癖や家主の夏羽織」「乳吐いてたんぽぽの茎折れにけり」「としよりの居睡りあさき春日かな」「消炭のつやをふくめる時雨かな」「しろがねもまぜて銭ある寒さかな」「夏あはれ生きてなくもの木々の間」なお、とみ子夫人に関する散文が何とも言えぬ。犀星は彼女に才能が無いと言うが、娘の言う通り犀星と結婚しなければその才能は開けたのではないか。犀星の文学者としてのエゴを垣間見たような気がする。2025/06/23