出版社内容情報
「いい人だったがなア」――.わがままで甘ったれ,嘘もつく,ずるいところもある,しかし,どこか愛嬌があって憎めない極楽とんぼ.怠け放題で,ひたすら女道楽に過ごして大往生した男の七五年の生涯を,自在な描写と豊かなユーモアで描く.当時七三歳,達人里見〓の生んだ絶品.戦時下の秀作「かね」を併収. (解説 秋山 駿)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
みや
12
「小説の名人」と謳われた里見氏の昭和36年に発表された表題作始め2篇。飾らぬ文体と衒わぬ舞台設定を用いて冴えない主人公の一生を紡ぐことで、人間そのものを提示してみせる。人生を俯瞰してみれば、それは着実に「死」へと向かっていく不可逆的な歩み。結局は、いまわの際に抱く主観的な感想が人生の通信簿。あの世への繰越はなく、全ては無に帰するのだ。人の世はかりそめのものであり、悔いのないように生を全うすべしと受け止めた。2023/04/06
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12
うーむ…葉蔵のアンチテーゼかと思って読み始める。それくらい悩まない人間像、どこか憎めないところ。飄々と生きる。とおれはこの本の感想ひとつとっても悩む。うーむ…とかいっちゃう。でも周三郎なら笑うだけだろう。文学の一つのエッセンスに近代的自我が発達してからの悩み、があるならば、なんとまあ反文学的主人公なのだろうか。こんな文学が、人間があってもいい。 でもごめんなさい、わたしこの人キライです笑2020/06/23
qwer0987
10
表題作の魅力は講談調のような、流れるようなリズムの文体にある。そこからすっと物語世界に入れるのが良い。周三郎は腰が据わっていない甘ったれの好色野郎だ。一言で言えば仕様もない男だが、そんな彼の一生をユーモラスに描いており楽しめる。とは言え、個人的には『かね』の方が好み。平凡な男の他吉は他人の金を盗むようになるが、金を集めて何かをしたいわけではなく、ただの収集癖と大差はない。一見すれば彼の行為は虚しいわけだが、それに夢中だった他吉はある面では幸福だったのかもしれない。そう思えるふしぎな説得力が心に残った2025/11/14
1.3manen
10
必死に生きる。ばか正直に生きる(251頁)。慶応義塾への編入が許可されたが、5年級をやりなおさせられたという(26頁)。一致団結、相互扶助、先輩への礼、後輩への愛、という共通の気持の大事さ(119頁)。「かね」には、喘息にいいという、三朝温泉が出てくる(234頁)。通訳案内士1次試験日本地理を学んだひとは、「みささ」と読める地名。米や味噌を背負って湯治に訪れるようだ。僕も、できれば、お気楽に、植木等のような無責任、そんなテキトーな人生もいいかと思う。しかし、根がまじめだから、極楽とんぼの生き方はできない。2013/08/30
五条権中納言
4
周三郎はそんなに自由気ままな極楽な生き方はしていないように思えるけど、当時だとそういうふうに受け取られたのかね。全然普通な人に思える。周三郎が極楽とんぼなら、現代人の4割くらいも極楽とんぼな気がする。2024/06/28




