出版社内容情報
紀尾井町の旦那藤代信之の恋愛遍歴を中心とする小説.彼はさまざまな女性と関係するが,まごころのままに生きるという自分の生き方にすこしも疑念をはさまない.彼は自分の金を詐取して出奔する男にも,それが恋に対するまごころのためなら祝福し,不良少年の姦通にもそこに心の誠があれば許す.作者の哲学をもっともよく伝える作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
シロナガススイカ
11
『不俗是仙骨 多情乃仏心・・・・』/様々な女と関係を持つ主人公の生き様。/これは……。前篇からは想像できないほど大きく動いたな。前篇の記憶は既に希薄なのに、後篇はのっけからインパクトが強い。それを求めていた訳ではないが、やはり名が残っているだけあってそれなりの展開になるんだなぁ。後半にはタイトル回収も。近年の漫画みたいでなんかいい。その信念に同調できないとはいえ、最後には本書の主張が明言される形になったも好ましかった。そして最後の一文がズルい! 結局全篇通すといい感じに仕上がってるの、してやられた感ある。2025/03/01
マー
2
「断鹽断茶」の中の「人品のいい、白髪頭を短く刈り込んだ、骨組の嚴丈な爺さんが」幾代を迎えに来る場面は志賀直哉の「暗夜行路」を思い出す。白樺派の盟友の証ということでしょうか。 最近は所謂花柳小説の類をたまに読むことがある。時代錯誤を認識して読むわけだから、現代の私には男女の心理描写に喫驚させられることが多いのだ。今の考え過ぎる恋愛も脳に刺激はあるが、当時のダイレクトな恋愛もまた趣きのあるものである。2018/04/28