岩波文庫
煤煙

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  • サイズ 文庫判/ページ数 306p/高さ 15cm
  • 商品コード 9784003104316
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

出版社内容情報

妻子ある要吉は研究会で知った朋子と深く愛し合うようになった.しかし,彼女の病的な性格に苦しめられ,ついに心中行を企てるが,直前で死を思いとどまる.情熱や死を通過して人生を肯定しようとする作者の態度が熱烈な筆致で描かれている.当時社会的事件として騒がれた作者(1881‐1949)自身の恋愛を扱い,世評を呼んだ.明治42年作.

内容説明

平塚らいてうとの恋愛事件をモチーフにした長篇小説。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

nina

19
明治41年著者27歳の頃、当時大スキャンダルとなった平塚らいてうとの心中未遂事件に至る恋の道程を私小説風に描いた作品。百年以上前の話なので文体がだいぶ時代がかっている。己にしか興味のない女のエゴと恋に溺れる己に酔う男のエゴのかみ合わなさは死に向かうにはあまりにも幼く不毛であり、塩原の地でまるで死から拒絶されたように雪の中を彷徨い続ける終章の二人の姿は滑稽ですらあるのだけれど、とても強く惹きつけられる。恋とはまず相手のためではなく自分のためにする身勝手で独りよがりな行為であり、それで良いのかもしれない。2014/02/05

shinano

16
岩波で再読。時代、社会、価値観、の違う日本と日本人に、現代人がどう読むかがひとつの学びと思う。 が、著者の師が夏目漱石だったからこそこの作品が世に出たという因果もある。いまの芸能人や著名人の「事後」暴露本とかわらない部分もあるが、随筆でなく小説にしたことに、著名が頭を使っている。 しかし、世のひと読み手は意識が違う、いつの時代も。 あの時代にワイドショーがないだけで、大衆の気質はかわらない。 この作が出るのに漱石がらいてうの家族に頭下げたのは、大衆は知らない。2020/03/17

C-biscuit

15
図書館で借りる。子供とマンガ日本史を読んでいるが、平塚らいてうの号があり、その中でこの小説のことを知った。この小説の要吉は作者の森田自身であり、朋子が平塚らいてうである。当人が書いているのでおよその筋はその通りであろうが、もう少しらいてう側の視点で書かれているものかと勘違いしていた。今の時代もスキャンダルが人を有名にしてしまうが、森田もこれで有名人になったようである。内容については、そういう視線で読んでいるのもあり、前半の部分が進まなかったw。当時も醜聞事件の真相が知りたく読まれていたのだろうと感じる。2017/02/04

フリウリ

12
森田草平と平塚らいてうとの心中未遂事件をもとに、森田が事件までの経過を記した自伝小説で、面白く読みました。甘い男(人間)が死を望む女(人間)に魅入られて心中に至るが、男は「男女関係」でしか相手を見ないのに対して、女は「人間関係」として相手を見ていて、そのズレに気づかぬまま、男は女に翻弄されていきます。男(森田)の愚かさを包み隠さず書いていることはよいのですが、作品の魅力のほとんどは女の力だと思います。男(森田)は徹底的に甘い人間(男)なので、こんな面白い人間(女)と巡り合わない限り、小説は書けません。72023/09/02

かふ

7
主人公の要吉は女子学生に外文を教えるプレーボーイの先生で、ヒロインは劇場型女子大生というどうしうもないカップルの話だった。最初の印象がサロメのようなという観念的な世界で弄ぶ、デートの場がニコライ堂で女の指を噛んだり、要吉が朋子に貸す本がダヌンツィオ『死の勝利』の英語版という(この小説を真似たんだな。Amazonの紹介文を読んでそう思った)。劇場型女子大生対エゴイスト大学講師の恋愛の成れの果てという話。2017/02/21

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