出版社内容情報
春信、歌麿、北斎、広重などの浮世絵を手がかりにして、日本の本質を探った1冊。『陰翳礼讃』の先駆的著作。(解説=高橋克彦)
内容説明
春信の可憐さ、歌麿の妖艶、北斎の硬質さ、広重ののどかさ―浮世絵の奥ぶかさや絵師たちのめざしたものを、図版にたよらずに、文章で論じつくした江戸芸術論集。浮世絵という小さな美を手がかりに日本の本質をさぐった一冊。
目次
浮世絵の鑑賞
鈴木春信の錦絵
浮世絵の山水画と江戸名所
泰西人の見たる葛飾北斎
ゴンクウルの歌磨及北斎伝
欧米人の浮世絵研究
浮世絵と江戸演劇
衰頽期の浮世絵
狂歌を論ず
江戸演劇の特徴
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
112
永井荷風の文語体の文章による江戸時代の浮世絵論です。いつもの荷風の作品を読んでいる感じはなく学術書的な内容ではないかと思いました。終わりの方には狂歌についてのはなしや江戸時代の演劇についても論じられています。私は解説を書かれた高橋克彦さんの話が楽しめました。高橋さんも浮世絵ミステリーを書かれていますよね。2019/10/27
クプクプ
57
浮世絵がテーマの専門的なエッセイでしたが浮世絵がわからなくても楽しめる一冊でした。何といっても永井荷風の美しい文章にため息がもれるばかりでした。意味がわからなくても読んでいて勇気がわいてくる本でした。文中、児手柏(このてがしわ)や武蔵鐙(むさしあぶみ)など現在、植物の和名になっている単語が出てきて、植物の和名の歴史が少しわかりました。2020/07/01
A.T
11
永井荷風の江戸趣味の原点でしょうか、濃厚な浮世絵と歌舞伎に対する思いが詰まっています。その知識造詣の深さに驚きました。2016/10/19
壱萬弐仟縁
9
「浮世絵は外人の賞するが如く啻(ただ)に美術としての価値のみに留まらず、余に対しては実に宗教の如き精神的慰藉を感ぜしむるなり」(11頁)。鈴木春信の錦絵も出てくる。泰西人に見た葛飾北斎も。富嶽三十六景は、江戸日本橋の一図を採って板画を想像せしめんとす、とある(77頁)。富士山は天主の背後に棚曳く霞みの上に高く小さく浮び出さしむ(78頁)。ゴンクウルは凄い人のようだ。頗る浩瀚(84頁)。歌舞伎の話も。通訳案内士1次試験日本歴史にも出てきそうな内容。2013/08/14
しまりんご
3
永井荷風による浮世絵論。洋行した経験を活かし、ヨーロッパにおける浮世絵研究についても紹介。明治以降、文化芸術まで西洋化してしまった日本社会に対する辛辣な批判も読み取れる。2012/01/05