出版社内容情報
明治35年,荷風(1879‐1959)がゾライズムの影響を受けた時期の作品で,これによって新進作家として認められた.理想の人生の実現のためには人間の動物的側面を明らかにせねばならぬという立場から,教育家の醜悪な裏面生活や,富豪の妻の不倫などを暴露して,敢然と社会悪への挑戦を試みた青年荷風の激しい意気込みが感じられる.
内容説明
巨大な富を有しながら社会から擯斥される黒淵家に、家庭教師として入った園子だが…。荷風の青春期を記念する、気魄に溢れた代表作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うろたんし
2
「昂然として車の扉に立つ園子が頭上には、水晶の樣な空よりして、美々しく又愛らしく輝き初めた望みの星。」で、仕舞。めっちゃ面白かった。かつて森鴎外をして絶賛せしめたと知り読み始めたこの作品。僕の大好きな佐藤春夫が師と仰いだだけあって、随所に散りばめられた風景描写の美しさに、何度もなんども心ふるえた。それから、彼がこれを書いた年齢は二十四。僕と一年しか変わらないのに。天才かと。(笑)2012/06/05
駄目男
1
先日、私の好きな古本屋に立ち寄って隅からすみまで見ていたときにふと目に留まったこの本。 第1刷発行が1954年6月5日となっている。 中をめくるうち果たして読み切れるかという疑問が湧いてきた。 しかし裏には「品切れ」という走り書きがありやはり買うことにした。 家に帰って調べて見るとなんと初版は明治35年、永井荷風24歳の作品とある。 どうりで、それを知って、いやはや、実に重たい気持ちで読み始めた。 2013/08/17
うずまきねこ
0
作者が24歳の時に上梓した前期自然主義文学。許される罪と許されずに罰が下る罪…不合理だ。黒淵家の状態とかを見ると社会での問題にされる悪っていうのは、人間の汚れとか卑しさを反映した結果だと思う。またその根本となるのが「恋」なんだろう。園子に則して淡々とそれらの出来事や世の内情を描き表せる技量というのは、たとえ本家ゾラに比べては稚拙なものに見えたとしても、素晴らしいものだと感じた。ただ、園子が克己して新たな生き方を見つけても「惚れたものの弱み」のように終わったのが少し悔しい。2013/09/09
ユ-スケ
0
昔の文学はあまり読んでこなかったが、これはいい! 古臭さがないし、文章や描写が見事! まさに「文学」という感じがした 作者はひじょうに柔軟な精神をもった人だったのだろうなあ2013/02/15
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- 和書
- 招待客 角川ホラー文庫