出版社内容情報
藤村・晩翠によるわが国新体詩勃興期の後をうけ,その爛熟期の明治詩壇にあって明星のごとく清新に輝くのが蒲原有明(1875‐1952)である.優婉きわまりない象徴詩において探りえた詩境は余人の追従を許さず,その価値は不滅である.本書には「草わかば」「独絃哀歌」「春鳥集」「有明集以後」の作品から代表的な詩篇を収めた.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
52
明治の西洋詩が日本に輸入されて間もない時期の詩の数々。象徴主義に徹した詩は今日の眼から見るとひたすらに難渋であるが、本書では旧字体と相俟って何というか独特の香気みたいなものが感じられる。「滅の香」や「信樂」の中よりそこはかとなく感じられる東洋の香りもいいが、「姫が曲」のリフレインする南洋の香り、「日神頌歌」の上古の香りもまた捨て難い。詩というものも明治から現代にかけて随分と変わってきてはいるが、たまにはこの難渋なロマンチシズム溢れる言葉のリズムに身を任せるというのも悪くはないのではないかと思った。2017/04/17
双海(ふたみ)
13
典雅な詩集。好きですね、こういうの。「靜かにさめしたましひの、この日、花とぞにほひ咲く。ゆふべを待たぬ花なれば、ただしめやかに見ゆれども、わが戀ふる人、君をこそ、君が眼をこそ慕ひ咲け。」2014/05/23
壱萬参仟縁
9
旧字体で時代を感じさせる。「藝術は宿緣の開發である」(3頁)。なんだか、本質というか名言という印象を受ける。そんな運命的な作品に出逢えれば、それだけで生き甲斐を感じるのだろうな。「不安」(31頁~)というのは、音読してみた。6連4行から成っている。なんとなく、不安になってきた。続いて「絶望」が続く・・・。どれだけ人を落胆させるようなテーマなんだぁー。「晩秋」、とか、「秋の歌」というのもあるので安堵だが。滅入ったら、「朝なり」(60頁~)へスキップしてしまえばいい。乞丐(ものごひ)が出てくるが(61頁)。2013/10/17
misui
6
日本語への西洋詩の移入があらわに見て取れる。アレゴリー、象徴、韻律、行の跨ぎ方などといったテクニックやモチーフが晦渋な文語によって試みられ、ロマン的で典雅な詩の世界を湛えている。今読むとあまりに難解だが、その反面で、この世界にどっぷりと浸ってみると楽しいだろうなとも感じた。2016/02/17
ダイキ
4
有明にしても泣菫にしても、浅学の私にはとても理解できる内容ではなかったし、有明と泣菫の一部の詩は「詩」というよりも「Poem」の様に感じられた。保田與重郎をして、「これらの作品に匹敵できる學者の仕事は、おそらくわが古典の綜合的復刊、即ち古典の諸叢書的刊行以外にない」と言わしめた彼らを、この様にしか読むことが出来なかったのは全く以て遺憾である。2014/11/11