出版社内容情報
妻に去られた男の淋しさを綿々と訴えた手紙形式の小説.去っていった女に対する執着と,その遣る方ない淋しさから待合で馴染みになった芸者とのいきさつをこまごまと書き綴った,秋江(1876‐1944)の代表作.同時所収のその連作「疑惑」とともに,これほど深刻に,赤裸々に男の執着を描いた作品はない.解説=宇野浩二
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
22
あまりの未練がましさに全然感情移入が出来ないと思いつつも本当にその立場になったら自分もこのようになってしまうかもしれないという恐怖を感じつつ読みました。その点においてすごい小説だと感じました。2023/11/02
阿呆った(旧・ことうら)
12
妻に失踪されたり、商売女に入れあげては裏切られたり、という痴愚な男性を描くのが上手い作家さんです。それにしても情けない。2015/11/29
Kouro-hou
5
情痴文学の代表作。別れて逃げた妻を探しつつ、手を出した女郎にはウザがられてる妻連作の表題作と「疑惑」の2つと遊女モノの「青草」を収録。「疑惑」は妻が2年前に日光に行った事を知って宿帳の記録を探しまくる。今では絶対に許可されないw 回想では夜中に妻の家の雨戸をこじ開けて侵入しようとして物音を立てて逃げたりも。犯罪者だよ! しかもこれ作者の私小説だったりする。「青草」も私小説的ではあるが主人公の設定が美化されているのでまだ普通に読める。が、最後のあまりに爽やかな小便描写に漱石や芥川も唸っていたという…。2013/04/28
eazy
0
寝取られ男ストーカー情痴小説。おもしろい!2003/09/19
champclair´69
0
本作を読み終えた後、続編の『執着』も読んだ。岩野泡鳴の作品にもあったが、この頃の私小説は連作が流行っていたのだろうか。別れた妻というが、夫の余りの仕打ちに逐電した妻、と言った方が正確かも知れぬ。娼婦のお宮に心を奪われながら、兎に角妻には未練がましいのだ。そしてお宮も友人の長田に抱かれたことを知ると、まるで汚らわしい存在のように疎んじてしまう。当時の男性の女性蔑視、身勝手さが知れる。それにしてもこれまで花袋、徳田秋声、藤村、正宗白鳥、岩野泡鳴、近松秋江と読み続けて、自然主義文学にはいい加減飽きた。2023/10/09