出版社内容情報
女主人公お島は,気働きよくいつも体を動かしていなければ気がすまぬ,そういう女性だった.養家の非人間的な圧迫から逃れたのち,常に自主的に生きようと焦るが目的を果せず,結局は置かれた境遇に引きずられてゆく.秋声は,いささかの誇張も感傷もなく,お島を中心に,庶民の生きゆく日々を描写した (解説 谷川徹三)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
松風
20
お島のあらくれぶりに、いっそ胸がすく。2015/01/16
サニー
6
お島にも周りにも色んなことが起こり過ぎて、登場人物が多すぎて途中はかなり混乱した。この人は誰といても何をしても満足できない人なんだろうと思う。2020/07/14
Kotaro Nagai
5
本作品は大正4年1月~7月まで読売新聞に連載され同年9月に単行本で刊行された。タイトルの「あらくれ」とはヒロインお島を指す。このヒロイン像が型破りで、当時の時代を考えると、よく新聞に連載されたと感じる。お島は当時の「しとやか」な女性とは正反対で、思いついたことはすぐ口にして実行し、親や目上の人での意に添わなければ反抗するし男相手でも取っ組み合いのけんかもする。当時の女性全般に対する世間の風に逆らうように生きていく姿が描かれる。秋声の筆致は問題もあるが自身で人生を切り開いていくお島を描いてユニークである。2024/04/25
yoyogi kazuo
1
現代の観点から見れば非道な人権無視のオンパレードとしか言いようがないのだが、当時はこれがありのままの庶民の暮らしだったのであろう。〈お島〉が持ち前の強い気性で厳しい運命に抗おうと必死で生き抜いていく様子がさらに哀れを誘う。それにつけても感心するのが徳田秋声の文章の巧さである。川端康成が絶賛したのも頷けるし、文学的な文章とはこういうものをいうのだなと思う。『あらくれ』は成瀬巳喜男監督、高峰秀子主演で映画化されている(1957年)。こちらも是非見てみたい。高峰秀子のお島はハマリ役のように思える。2021/12/08
空箱零士
1
★★★☆ 正統派自然主義文学。幼い頃から養家で働かされたお島が、様々に反発をするも流される話。ドラマもないのにリズムよく読めるのは、市井の風俗を活き活き映す秋声の描写力と視点が大きい。昨今の自然主義文学もどきがウケないのは映すものが退屈だからであり、カメラ次第で対象を映えさせることは可能だ。鮮明に映された社会に映されるお島は、苛烈な性格故に弾かれ、気づけばあるべき所に収まっている。客観的には楽しそうな生活だが島はいつも苛立っている。鮮明に映された社会の問題は果たしてどこか? 個人? 社会? あるいは国家?2012/09/03