出版社内容情報
詩情と求道心が混然一体となった文学者・国木田独歩(1871-1908)。「柔い心臓を持っていた」(芥川龍之介)詩人にして小説家である。その小説は
内容説明
詩情と求道心が渾然一体となった作家・国木田独歩(1871‐1908)。「柔かい心臓を持っていた」(芥川龍之介)詩人にして小説家である。その小説は、今に至るまで広く愛読されている。『運命』は独歩が一躍脚光を浴びた代表的短篇集である。「運命論者」「画の悲み」「空知川の岸辺」「非凡なる凡人」など、全9篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
36
「運命」を主軸に様々な風景を描いた短編集でした。それぞれの物語にそれぞれの運命の色彩があり、独歩の世界へとスッと入っていくような味わいです。「運命」という題材だけで違う世界を描けるのに驚きました。2025/05/02
michel
11
〈運命論者、巡査、酒中日記、馬上の友、悪魔、画の悲み、空知川の岸辺、非凡なる凡人、日の出〉どの作品も読み終わると、しみじみと心の奥に染み渡る詩情。巻末の宗像和重氏に〈…平凡な名もなき庶民と目されている一人一人の人生を照らしだす一閃の電光、ーすなわち「運命」の閃きこそが独歩の最大の関心事であった。そして、その「運命」に翻弄され、あるいは克服しようとする人間の、それぞれに異なりつつどこか重なり合う姿を、独歩は飽くことなくなく描き続けた。そこに、独歩が短編作家である所以があり、独歩の短編小説の魅力があると思う〉2022/07/16
sazen
8
独歩は、初読みでしたが想像していたより読みやすかったです。「運命論者」と「画の悲しみ」が印象に残る。前者は割とよく知る鎌倉の海が舞台なので、情景が浮かびやすかった。しかし、天気の良いあんな浜辺に、あのような妙ちくりんな(笑)酔っ払いがいたら嫌だなぁ。「そこに、僕の酒が隠してあるんだ、どいてくれないか」って…こわいよ。そして、二昔前の韓流ドラマの設定そのものの展開というのは、明治期には成立していたんですね。2025/01/21
広瀬研究会
8
明治35~36年の作品群なので、主人公が運命に翻弄される『運命論者』とか『酒中日記』なんかは現代の読者には素朴というか、物足りないんじゃないかなって気がした。それにひきかえ、『画の悲み』や『非凡なる凡人』のように少年の友情あるいは刻苦勉励を書いた作品は面白く、テーマに普遍性があるってことなんだろうな。中でも『馬上の友』で描かれる汚れのない友情は、現代小説では嘘くさくなってしまうくらいのさわやかさと切なさ。最高でした。2022/08/15
袖崎いたる
8
短編小説集。国木田独歩は短編にこだわりのある作家だったとのこと。詩人とも言われるくらいなので、圧のある一文がキラッと光るのが良い。「運命論者」の印象は、この時代の日本のタブーって究極このパターンなんやなぁってこと。出生に関わることなんやけど、今このネタを使ったら陳腐で食えたものじゃないだろうな。2022/02/27