出版社内容情報
愛の作家蘆花が青春のひととき京都同志社の学窓にあって経験した苦恋の経緯を純朴な情熱を傾けて描いた自伝的小説.作者の言葉によればこの苦恋こそは彼を人生の裏小路へ追い込んでしまった事件で,その意味において,「思い出の記」とならんで偉大なる魂の発展史上のもっとも重要な1章をなすものである.大正3年刊.解説=徳冨愛子
感想・レビュー
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てれまこし
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同志社で曽祖父が蘆花と同級であったという話なので読んでみた。確かにそれらしき人がちょこっと出てくる。それはともかく、本の感想は、ちょっとばかり男の身勝手が鼻につく。蘆花にとってこの小説は新島襄や妻に対する贖罪の意味があったらしいが、私は悪女として描かれる久栄の方に同情した。女ながらに文章で世を渡っていく希望を持ち、また自由な恋愛観を持っていそうな彼女は近代的女性、後の漱石の三四郎に出て来る美祢子のような存在。今なら自立した女性の鏡にもなりえる。むしろ、ふらふらとゆれ動く男が情けない。贖罪をするならそっち。2017/07/06