出版社内容情報
春水(1790‐1843)は梅暦の発表により名声を博し,自ら人情本の元祖と誇称した.深川の花柳界を舞台として主人公丹次郎を中心に織りなされる深川芸者の恋と意気地――江戸末期の頽廃した情痴の世界を写し出して一派を開いたその作風は,現代の写実的風俗小説の源泉となっている.梅暦物全5部を2冊に分けて収め,興味ある多くの挿絵を付した.
感想・レビュー
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syaori
35
下巻に収められるのは、前巻で米吉と義理と意気地を競った仇吉を親身に世話した増吉と宗次郎の馴れ初めから説き起こす『英対暖語』とその続編『春色梅美婦禰』。本巻でも、宗次郎の見事な男気や、同じ男に恋慕した房吉とその姉粂吉の恋の意地と義理の張り合い、花魁此糸が恋敵お園に見せる情と、尽きない浮世の出来事にハラハラし通し。そのせいか、主要人物たちが一堂に会する最後の大団円では、寒いなか一つ二つ咲いていた梅の花が満開になるのを見るような、まことにめでたい心持になりました。あとは馴染みの面々の末永い幸せを祈るばかりです。2018/05/03