出版社内容情報
本書は,1通1篇の独立した書簡に評文を加えて1章として,全17章とする.華やかな元禄町人生活の諸相を描き,人間生活のリアリティに迫るとともに人間生活に絡まる悲痛な戦慄に触れ,西鶴晩年の傾向を特徴づける否定的な人生観を提示するもの.「西鶴置土産」と併称される異色ある浮世草子である.書簡体小説としても最も古く,かつ完成されたもののひとつ.
内容説明
年末のやりくりの指示、路銀の無心、冷たくなった馴染み客への遊女の訴えなど、書簡体で綴る、哀れでおかしい町人たちの日常。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
259
巻1と巻5が4話、巻2,3,4はそれぞれ3話という、やや奇妙な構成。そもそも本書が出版されたのは元禄9(1696)年と、西鶴の没後3年も経ってからのこと。西鶴の真作かは異論もあるところだ。内容的には、町人ものの系譜をひくものが多いが、中には好色ものや男色ものも。文体も一応西鶴らしくはあるものの、饒舌体は鳴りを潜めている。もっとも、これは書簡体を採用したことゆえか。凝縮度は西鶴随一かも知れない。「ポルトガル文」に遅れることわずか30年。世界文学の中でも、実に特筆すべき位置を占めている。 2018/04/30