出版社内容情報
下総の国布川を中心に大利根流域の地誌を精細に図説した本書は,安政年中,同地に住んだ一医師の篤志によって著わされた.歴史や風物,民間の異聞,伝説,棲息する鳥魚類,神社仏閣等が数十のさしえとゆかりの詩歌俳文を配して多彩絢爛に述べられる.興趣尽きない読みものであり,民俗学的にも示唆に富む文献である.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Koning
28
安政年間下総国布川の一医師赤松宗旦による利根川流域の地誌。江戸の観光ガイドとしても楽しめる位に色々と書いているんだけど、変なおっさんの話であったりも収録されているのでなかなかに素敵です。ただ、問題は絵図面が文庫サイズに縮小されちゃってるので見づらい(笑)。潰れてる!ってことですな(汗。初版は1938年っていうから岩波らしいというか。2015/12/09
mahiro
15
江戸末期に主に利根川下流域の地勢や集落について、地名の由来や旧跡の伝承、風物について詳しく描かれている、絵図も葛飾北斎など有名絵師が手掛け、今の千葉県、茨城県の辺りか、水が巡り茫漠とした野や丘陵や集落等が脳裏に浮かんでくる。利根川で昔は鮭が取れたとか取手市の名は砦からとか、平将門や義経、北条氏や戦国豪族の小競り合い、当時の原野は今や市街地になり由来旧跡も残るものは少ないだろうが、地域に住んで郷土に興味のある人が本書を読んだらきっと楽しいだろうなぁと思う、今も残る神社などあれば訪れてみたい。2024/09/16
どろすて
5
関東平野の住民にはなじみ深い利根川。黒船が来た頃に刊行されたこの地誌は、江戸時代の利根川流域の名所旧跡だけではなく、暮らしの様子や人々が何を考えていたか(特に挿入された手賀沼北辺紀行で顕著)を細かく伝えており、豊富なイラストとあわせて細かな驚きをたくさん与えてくれる。 本書を読んでいるときに丁度千葉県銚子市を訪ねたが、文中の挿絵に登場する海鹿島付近の様子は(アシカがいなくなってしまったことと遠眼鏡がなかったことを除いて)そんなには変わっておらず、まるで自分も歴史の本の中にいるような幻想的な気分を味わえた。2019/02/20
禿頭王
2
利根川流域の歴史・風俗・伝説・動植物・神社仏閣を網羅的に収めています。驚いたのは、記述されている町や神社仏閣の多くが、100年以上経った現在でも残っていること。地方に元気を取り戻すためには、こういう地方にしっかり根付いているものに目を向ける必要があるのではないでしょうか。地方の眠っている力を感じさせる1冊として、興味深く読ませてもらいました。2020/01/09
245
1
高村薫の小説登場本2012/11/20