出版社内容情報
南北朝の動乱のさなか,南朝の重鎮北畠親房は天皇家の歴史とそれに伴う過去の諸政治形態を論述し,南朝の正統性と君主のあるべき姿を説こうとした.大きな歴史の流れの中で滅びゆく側に立つという立場上の制約がありながら,しかしその記述には立場を超えた公正さがある.『愚管抄』と並び中世を代表する史論といわれる.
内容説明
南北朝の動乱のさなか、南朝の重鎮北畠親房は、天皇家の歴史とそれに伴う過去の政治形態を論述して、南朝の正統性と、君主のあるべき姿を説こうとした。大きな歴史の流れの中で滅びゆく側に立つという立場上の制約を受けながら、しかしその記述には立場を超えた公正さがある。『愚管抄』と並び中世を代表する史論といわれる。
目次
序論
神代
大日〓尊(おほひるめのみこと)
正哉吾勝々速日天忍穂耳尊
天津彦々火瓊々杵尊
彦火々出見尊
彦波瀲武〓〓草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあえずのみこと)
神武天皇
綏靖天皇
安寧天皇〔ほか〕
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
金吾
19
思っていたよりも客観的だなあと感じました。徳による政治というのが出来ていたことがあるのだろうかと思いながら読みました。2021/01/31
双海(ふたみ)
19
岩佐正氏のお名前、どこかで見たことあるなぁと思いながら本棚を眺めていたら・・・あ、いたいた、『新葉和歌集』だ。山田孝雄博士が校訂した『神皇正統記』も読まないと。2015/02/20
LUNE MER
17
歴代の天皇の記述は均等ではなく、「え⁈こんなメジャーな天皇なのに記述はこれだけ⁈」という驚きもしばしば(例:天智天皇)。逆に筆を多く割いているところから北畠親房の執筆意図を読み解くヒントとも言えるので興味深い。そんな中で今回お目当てだったのは鎌倉幕府に係る箇所で、「伊豆の在庁官人風情が!」と身分意識を全面に押し出す護良親王の感性とは全く異なり、親房の北条氏に対する評価は中立的で冷静な視点を感じる。余談だが、月読尊を男性神だと言い切っていて、当時からそういう認識が主流だったことも読み取れて面白い。2022/04/08
壱萬参仟縁
17
木曽義仲は、第82代、第44世、後鳥羽院のところで登場(145頁)。「義仲はやがて滅ぬ」そして、「頼朝は従五位下前右衛兵佐なりしが、義仲追討の賞に越階して正四位下に叙し」云々とある(147頁)。歴史評価は割れるが、地元の英雄は、ここでは悪く書かれている。討ってでかした、ということだから。わたくしは、史学が専門ではないので、史学会の方が反論されればよいと思う。2013/12/23
浅香山三郎
12
『北畠親房』(ミネルヴァ書房)からの流れで読む。これまで南朝の正統性を述べる本、といふことで読まず嫌ひみたいになつてしまつてゐたが、神代から後村上天皇に至る歴代天皇の事績を評した、至つて真面目な構成。悪い王が現れれば、正統な天皇の系譜が移動するといふ道理を貫くなど、親房に投影されがちな、頑迷なイメージとは違ふ、それなりの「公正さ」も読み取れる。2021/04/19