出版社内容情報
『日本往生極楽記』は、45人の往生者を42話に収め、浄土信仰の事績と往生の際の様相を慶滋保胤が編んだ。浄土教信仰の確立期に成立した最初の往生伝。『続本朝往生伝』は、『日本往生極楽記』の後を接ぎ、42人の往生伝、院政期貴族社会での往生観を大江匡房がまとめた。平安時代の代表的な往生伝2篇に注解を付した。
内容説明
平安時代の代表的な往生伝二篇。慶滋保胤『日本往生極楽記』は、四十五人の往生者による、浄土信仰を描いた最初の往生伝。大江匡房『続本朝往生伝』は、四十二人を通して往生観を伝える。後世の思想・文学に大きな影響を与えた。あらたに詳細な注解を付した。
目次
日本往生極楽記
続本朝往生伝
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
48
平安時代、儚い現世において如何に極楽浄土へ近づけるのかを偉人たちの業績と共に紹介した本。とはいえ、隠した金が気になり、蛇体と化す、同僚に嫉妬して死すも地獄巡りを経た上で復活する、逆に往生へ道を秘す為に口を閉ざした結果、弟子が犬に食い殺されて現れるなど、失敗から経ての成長譚もあるのでご安心を。パターン化された往生譚において「遺体は腐るどころか、薫香漂う」というエピソードは『カラマーゾフの兄弟』でのゾシマ長老の葬儀とはまさに反対である。続本朝往生伝は貴族に縁のある人物を挙げているので貴族に阿った感は否めない。2025/02/03
眉毛ごもら
2
この人は生前善行を行い、死の前後こんな現象が起きたので極楽往生間違いなし!という事例が並べられた逸話集である。平安時代の浄土信仰を知る上で大事な本。ある種の魔境とか最期を迎える敬愛する人への優しさのリップサービスとか願望とか混じってそうだなと思わんでもないけどそれもまた信仰でしょう。続の方の悪行三昧の武人や金持ちへの皮肉たっぷりのコイツラでも往生できるのか…みたいなところが本音が出てて好き。現代語訳は無いが注が充実してるので比較的読みやすい。岩波の昔の版は読みにくかったが最近は読みやすくなったのでヨし!2025/03/15
山中鉄平
2
平安時代のある程度身分の高い方々が往生極楽をどう捉えておられるかを垣間見ることが出来てとても面白かった。念仏を中心にした往生の為の修業を徹底された人々はその周りの人々から尊ばれ臨終の際は美しく仏の来迎にあずかるというエピソードはあるひとつの形式をもって語られたらしい。現代の我々は極楽なんぞ信じていないがそれが偉いとは限らない。臨終の先が骨を残しただけで何も無し、じゃああまりにも哀しいじゃあありませかという人があるけどそれについて少しく考えても損はない……かな。2024/12/30