出版社内容情報
宿報,霊鬼,悪行―いよいよ『今昔物語集』本朝部のクライマックスである.芥川竜之介の「藪の中」「羅生門」「鼻」をはじめ,室生犀星,福永武彦ら,数多くの作家たちの想像力をかきたて,数多くの作品がここから生れた.
内容説明
巻二十六から巻三十一まで。宿報、霊鬼、悪行―いよいよ『今昔物語集』本朝部のクライマックスである。芥川竜之介の「薮の中」「羅生門」「鼻」などをはじめ、室生犀星、福永武彦ら数多くの作家たちの想像力をかきたて、数多くの作品がここから生まれた。
目次
巻第26 本朝付宿報(但馬の国にして鷲、若子を〓み取れる語・第一;東の方に行く者、蕪を娶ぎて子を生みたる語・第二 ほか)
巻第27 本朝付霊鬼(川原の院の融の左大臣の霊を、宇陀院見給へる語・第二;桃園の柱の穴より指し出づる児の手、人を招きたる語・第三 ほか)
巻第28 本朝付世俗(近衛の舎人共稲荷詣でして、重方女に値へる語・第一;頼光の郎等共、紫野に物を見たる語・第二 ほか)
巻第29 本朝付悪行(人に知られぬ女盗人の語・第三;世に隠れたる人の聟と成りたる□語・第四 ほか)
巻第30 本朝付雑事(平定文、本院の侍従に仮借せる語・第一;中務の太輔の娘、近江の郡司の婢と成れる語・第四 ほか)
巻第31 本朝付雑事(湛慶阿闍梨還俗して、高向公輔と為れる語・第三;大蔵の史生宗岡高助、娘を傅ける語・第五 ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
56
26巻-17『芋粥』、18巻ー20『鼻、』29巻ー3『偸盗』、29巻-18と31巻ー31『羅生門』と、芥川の作品の元ネタが多い巻。他に、姨捨て伝説(30巻ー9)、竹取物語(31巻ー33)高野聖の元ネタ(31巻ー14)も。29巻の霊鬼譚は『今昔物語』の醍醐味ともいえる巻で平安時代らしさが凝縮された巻だと思う。他の巻で好きだったのは、大江山の酒呑童子退治で有名な源頼光の家来たちの賀茂祭見学での失態話(28巻ー2)。鬼をも倒す武人が、慣れない牛車にへどもどする無骨さが何とも言えなく面白かった。また同じ賀茂祭で⇒2017/02/07
syaori
43
引き続き本朝の世俗についてが臨場感あふれる文体で描かれます。鬼になった猟師の母親や生贄を要求する獣の神を退治する話など昔話や怪談として聞いたことのあるものも多くて、不意に懐かしいものに出会う高揚感を味わう楽しさもありました。それにしても通読して感じたのは、「今は昔」と語り始める物語に飛び込めば、いつだって昔は今だということ。確かに鬼や仏や霊界や、狸や狐が人を化かす世界は遠くなってしまったけれど、そこにはいつの世も変らぬ人々の興味や情もあって、まるでその場に居合わせたように遠く近い人々の営みを味わえました。2018/01/19
まふ
1
日本の国の日本らしさが満喫できる最高の古典であろう。初めて読んだ感想は一言、「面白い」である。平安末期に完成したと言われるが、卑猥、卑俗なものまで含めて、人間の生き様、人間の弱さ、喜び、悲しみが、怒り、嘆きがありありと描かれている。古今の作家がこれを範として、これによって名作をものにしたことが納得的であり、よく分かる。日本人ならこれを読むべきである2003/05/23
コウ
1
時代を超越して伝わってきた(もしくは残ってきた)物語には、やはり力があります。★★★★★2008/06/27
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- 和書
- 木で軍艦をつくった男