出版社内容情報
一地方官の娘として育った作者が,父につれられ京へ上る時の紀行から始まり,『源氏物語』を手にして「后の位も何にかはせむ」と,几帳の蔭で読み耽った夢みがちの少女時代,そして恋愛,結婚,夫との死別,五十代の侘しい一人住いを綴って日記は終る.平安時代が次第に翳りをおびてくる,そうした社会に生きた一人の女性の記録.
内容説明
一地方官の娘として育った作者が、父につれられ京へ上る時の紀行から始まり、『源氏物語』を手にして「后の位も何にかはせむ」と、几帳の蔭で読み耽った夢みがちの少女時代、そして恋愛、結婚、夫との死別、50代のわびしい一人住いを綴って日記は終っている。全盛期の平安時代が次第に翳りをおびてくる、そうした社会に生きた一人の女性の記録。
目次
かどで(寛仁四年)
太井川
竹芝寺
足柄山
富士川
梅の立枝(寛仁四年‐治安元年)
物語(治安元年‐同二年)
大納言殿の姫君(治安二年‐同三年)
野辺の笹原(万寿元年‐同二年)
東山なる所(万寿二年‐同三年)
子忍びの森(-長元五年)
鏡のかげ(長元六年-同九年)
宮仕へ(長元九年-長久三年)
春秋のさだめ(長久三年-寛徳二年)
初瀬(永承元年)
修行者めきたれど
和泉
夫の死(天喜五年-康平元年)
後の頼み
定家の奥書・注記
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
80
カエリ鯛さんの『腐男子社長』というコミック・エッセーで「更科日記は地域在住ガチヲタ勢の叫びだ」という記述に衝撃を受け、読むことにしました。うん、確かに「后の位になっても引き篭って好きな物語を読める喜びに比べりゃ、大した事ないわ!」と言い切れたり、昼夜も問わずに舐めるように読むのはガチヲタしかあるまい(笑)しかし、結婚すれば社会から隔離される形で男の庇護下に完全に入ってしまい、挙句の果ては夫に先立たれたら人にも頼れずに己の力で生計を立てるのも難しい平安貴族の地域勢の現状にゾッとさせられる。2017/06/09
ヴェネツィア
62
父の国司の任が果てたのに伴って、日記の作者が「あづま路の道の果て」から上京したのは寛仁4(1020)年の秋のことであった。時に孝標女は十三歳。日記の冒頭で物語への痛切なまでの憧れが語られているが、『源氏物語』が流布し始めたのは、ちょうど作者が生まれた頃。してみると、孝標女はほぼ同時代の物語として源氏を読み、その時代を生きたことになる。帰京した翌年に、彼女はとうとう念願の源氏全54帖をおばから手に入れるが、そのあたりが彼女の人生で最も充実していた時であった。その喜びは1000年たった今も強い共感と共に甦る。2013/05/10
双海(ふたみ)
21
音読用。気持ちがいいですね、音読って。2014/07/31
阿呆った(旧・ことうら)
16
古文で書かれているので、注釈をたよりに読み進めた。◆平安時代の日記文学において、土佐日記、蜻蛉日記、和泉式部日記、紫式部日記の次の位に位置するらしい。写実的というより、回想的。◆作者はあまり幸福な人生を歩んでいない模様。子ども時代は、源氏物語に思いを馳せる少女。◆最終的な感想は、源氏物語はすごい。2016/09/01
やまちゃん
14
昔読めど覚えたらず。晩秋にふと薄きものならばと手に取りたり。文は難く輪郭がすずろにわかるほどなれば、短歌などは今語を見き。菅原の孝標の娘の十から晩年までの亊を磨かれし言の葉に語れり。昔の人はよく泣きこころ直なれど、歌は控えめなりかし。作者は源氏物語などに憧るれど、うつつは侘しくさほど良きがなかりめかし。また、読みてゆかし。2018/11/24