出版社内容情報
生殖不能要件は憲法違反――長く放置されてきた人権侵害を是正するため、「性同一性障害特例法」の改正が求められている。いま私たちに必要な基礎知識とは何なのか。特例法が制定された背景から、法・医学・国際人権の知見まで、高井ゆと里、野宮亜紀、立石結夏、谷口洋幸、中塚幹也らエキスパートが解説する。
内容説明
生殖不能要件は憲法違反―長く放置されてきた人権侵害を是正するため、「性同一性障害特例法」の改正が求められている。いま私たちに必要な基礎知識とは何なのか。特例法が制定された背景から、法・医学・国際人権の知見まで、高井ゆと里、野宮亜紀、立石結夏、谷口洋幸、中塚幹也らエキスパートが解説する。
目次
第1章 特例法の制定過程から考える、その意義と限界(野宮亜紀)
第2章 性別変更要件とはなにか(立石結夏)
第3章 国際人権基準と性別記載変更法の現在(谷口洋幸)
第4章 特例法とトランスジェンダー医療(中塚幹也)
著者等紹介
高井ゆと里[タカイユトリ]
群馬大学情報学部准教授。哲学・倫理学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネギっ子gen
50
【生殖不能要件は憲法違反】2003年に「性同一性障害特例法」が制定された背景から、法・医学・人権の知見まで、各専門家が解説したブックレット。<2024年に見込まれる法改正は、そのため大きな意味をもちます。長いあいだ放置されてきた人権侵害の法律を正面から見直し、きちんと改正するチャンスが国会に与えられたのです。そのチャンスを与えたのは、短期的には2023年の最高裁判決ですが、長期的には、それぞれの条件の問題を訴え、ときには裁判を起こして闘ってきた、これまでの当事者や支援者たちの努力によるものです>と――。⇒2024/10/26
venturingbeyond
33
特例法の不妊化要件規定に最高裁の違憲判断が示され、外性器近似要件規定についても、身体への不要な侵襲を強要する規定と見なして、これを違憲とする判断が示されるとの見通しが高まる昨今、まさにタイムリーな一冊。問題含みの制定のプロセスにおいて、当事者の苦渋の選択により、「はじめの一歩」として成立した立法の歴史(1章)、特例法の構成とその問題点の詳述(2章)、近年の国際人権法におけるトランス当事者の人権の位置づけの変容(3章)、トランス当事者の医療上の課題(4章)と特例法について抑えておくべき論点を列記した良書。2024/04/20
coolflat
17
4頁。自分が生きている性別を生まれたときに否応なく登録された性別ではなく、自分が生きている性別に合わせること。それは性別を移行したことのあるトランスジェンダーの人たちにとって極めて重要なことであり、権利でもある。今生きている性別と法律に登録されされた性別が食い違っていると、就職活動や病院への通院、結婚など、人生や生活にとって重大な意味を持つ場面で周囲とのトラブルになることがあるからだ。しかし特措法はトランスの人たちのそうした重要な権利を守るために、かえって人権侵害となるような条件を設定してきた。2024/08/04
katoyann
14
性同一性障害特例法改正に伴い、現行法の問題点を弁護士やジェンダークリニックの医師が解説している。改正前は生殖不能要件があり、これが違憲と判断されて改正となった。憲法第13条に違反するという判断である。他にも外観要件や子なし要件が違憲であるという解釈が示されている。手術を受けないと性別変更ができないというのは、当事者に過酷な判断を迫るものだ、という司法判断が法改正に結実した。2024/09/25
miki
5
この問題に関する、活動家・弁護士・研究者(人権)・医師それぞれの論稿。90ページ無いのに、これを読むだけでよく問題が理解できる。/最近世間で頻繁に話題に上がるトランスジェンダーの話が(スポーツの問題を別として)基本的に彼らの実態を全く理解していないことに起因していることがよくわかる。「手術なく戸籍変更を認めるとトイレに女だと言い張る男性が〜」とか「子なし要件をなくすと、親の性別が変わって子供に良くない」とか。2024/08/15