出版社内容情報
私たちは日本が行った戦争と植民地支配をどのように認識してきたのか、そしてそこにはどのような視点や発想が欠落してきたのか――長引くウクライナ戦争、東アジアの緊張の高まりなどをうけ、「戦争の危機」が喧伝されるなか、戦後日本がつくりあげてきた平和主義を再生・発展させるために、私たちの歴史認識を問い直す。
内容説明
私たちは日本が行った戦争と植民地支配をどのように認識してきたのか、そしてそこにはどのような視点や発想が欠落してきたのか―長引くウクライナ戦争、東アジアの緊張の高まりなどをうけ、「戦争の危機」が喧伝されるなか、戦後日本がつくりあげてきた平和主義を再生・発展させるために、私たちの歴史認識を問い直す。
目次
第1章 占領政策と日本―何が問われ、何が問われなかったのか
第2章 高度成長と遠のく記憶―「忘却」と逃避
第3章 あらためて問われる日本の歴史認識―冷戦の終結と被害者からの告発
第4章 歴史修正主義と歴史認識―記憶の忘却と棚上げされる責任
著者等紹介
宇田川幸大[ウダガワコウタ]
1985年神奈川県生まれ。一橋大学大学院社会学研究科博士後期課程修了。博士(社会学・一橋大学)。日本現代史専攻。現在、中央大学商学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Mc6ρ助
19
『一九八七年に行われた朝日新聞による世論調査では、「日本が戦後四〇年あまり平和だったのは、おもにどんな理由によると思いますか」との質問に対して、「悲惨な戦争体験」が二八%を占めて最多となりました(『朝日新聞』一九八八年一月一日付朝刊。なお、 二位は「国民の努力」二六%、第三位が「平和憲法」 一七%)。 戦争体験が平和主義の一角を担ってきたことが分かります。(p3)』政治もメディアもかの敗戦を糧とすること能わず、サルでも出来る反省をなさぬは我のみにあらず・・。かくて、負けに不思議の負けなし、なのか?2023/07/14
coolflat
14
10頁。ポツダム宣言が、アメリカとイギリスの被害を重視して、結果として中国やアジアの被害を軽視するものになっていた。また宣言は米、英、中の三国によるものだから、他のアジアの意見は反映されていない。日本の戦争で最も大きな被害を受けたのはアジアである。にもかかわらずアジアの声が無視・軽視され、アメリカやイギリスなどの欧米諸国の意向が優先される。そしてこれを日本側も利用してゆく。という構図が、東京裁判や日本の戦後処理に持ち込まれてゆくことになるのである。2024/05/15
YT
10
日本の歴史認識の問題点を 1.戦争責任を問う意識がそもそも弱かった 2.満州事変以前のことが視野に入れられていない 3.戦後処理の事実関係が早々に忘却された、と整理してある。 日本は戦後責任について、忘却している事があまりに多いという事を知り、学び、少しずつ 認識を矯正していくのが大事だ。 最後に、歴史を学ぶ重要性が解かれているが届いて欲しい層にこのことが届かない事が本当に哀しいと思う。真摯に戦争責任を見つめ、教育へ落とし込んだり、経済成長期にアジアへの補償をしっかりしていれば良かったと思うが後の祭りだ。2025/01/20
ののまる
6
中高生の必読書にしたらいいのにな!もちろん、大人も読んだ方がいい。2023/07/29
みさと
6
戦後日本の平和主義を支えてきたのは悲惨な戦争体験であった。戦争を体験した世代が次々と鬼籍に入る中、日本社会の戦争の記憶は忘れられていき再び戦争の危機が忍び寄ってきている。とはよく言われることである。著者はこれに「本当にそうか?」との問を投げかける。「あの戦争」と言ったとき、それはほぼ対米戦争のこと、よくて満州事変以後のことである。日清・日露・第一次大戦は?朝鮮侵略・植民地支配は?アイヌ同化・琉球処分は?女性に対する戦時性暴力は?ほとんどの場合一顧だにされない。それこそが日本の歴史認識の現実なのではないか。2023/04/17