出版社内容情報
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」。危険性を指摘され、国会で三度廃案になった法案が装いを変え、「テロ等準備罪」の呼び名で新設されようとしている。しかし、この立法は犯罪対策にとって不要であるばかりでなく、市民生活に重大な制約をもたらすものだ。第一線で活躍する刑事法研究者が数々の問題点を指摘し、警鐘を鳴らす。
内容説明
犯罪を計画段階で処罰する「共謀罪」。危険性を指摘され、国会で三度廃案になった法案が装いを変え、「テロ等準備罪」の呼び名で新設されようとしている。しかし、この立法は犯罪対策にとって不要であるばかりでなく、市民生活に重大な制約をもたらすものだ。第一線で活躍する刑事法の研究者が数々の問題点・矛盾点を指摘する。
目次
第1章 共謀罪と日本法の違い
第2章 国連条約にそぐわない内容
第3章 オリンピックのためというウソ
第4章 テロ対策のためというウソ
第5章 内容の無限定性
第6章 治安を向上させず市民を圧迫
第7章 国会運営の異常さ
著者等紹介
〓山佳奈子[タカヤマカナコ]
京都大学法科大学院教授。東京大学法学部卒。成城大学法学部助教授、京都大学大学院法学研究科助教授を経て、現職。専門は刑法の基礎理論、経済刑法、国際刑法(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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こばまり
56
大事なことが何気無い風を装いあっさり決められている気がしてならない。これ程情報化が進んだ世の中であっても国民はそれを止められない。本書を読んで、残りの人生を無事に過ごせるか不安になってしまった。共同正犯との違いは正に確認しておきたかった点。2017/06/23
ぐうぐう
36
参議院に舞台を移して審議中のテロ等準備罪、いわゆる共謀罪の問題点について整理され、端的にまとめられている。日本の刑法が、英米法ではなく、ヨーロッパ大陸法の伝統に属していて、英米法の伝統を持つ国々で用いられてきた共謀罪が日本には馴染まないという視点があることを、本書で初めて知った。法案成立の動機となっているパレルモ条約との整合性がまるでなく、2020年の東京五輪開催のためにテロを防ぐという大義名分も、法案内にテロ対策を含んでいないことで崩れてしまっている。(つづく)2017/06/05
Y2K☮
32
昨年某芸人が共謀罪に賛成と知り唖然とした。テロを未然に防ぐ為なら多少冤罪があってもいいとまで云ったらしい。頼むからこの本を読んでくれ。忙しい? では簡潔に。まずTOC条約締結に共謀罪立法は不要。むしろ立法しない方が原則。次に共謀罪は自爆を含む個人のテロを防げない。組織犯罪に関しては日本はすでに国際条約に対応し、国内立法を整備している。実行犯ではない共謀者の処罰体系も共謀共同正犯の法理で確立済み。つまり具体的な危険性を要件としない共謀罪は治安向上に貢献せず、ただ表現の自由を萎縮させ冤罪の発生率を高めるのみ。2018/03/14
内島菫
29
大学(法学科)で学んだことを思い出しながら読んだ。共謀罪の問題点①大陸法に属する日本法の伝統を無視したものであること。現行法でもすでに、未遂や予備の罪、共犯の処罰を今の法体系に沿い、関連し合う法律とも整合性を持って規定されている。共謀罪はこれらとは独立に英米法の概念を急に持ち込んでいる。②その理由として与党は、国連国際組織犯罪防止条約を締結するためというが、当該条約はマフィア対策が目的であるため、むしろ共謀罪はこの条約の要求に応えていない上、要求以上の範囲にまで処罰を及ぼそうとしている。2017/06/25
coolflat
21
安倍首相は2020年の東京オリンピック開催のために「テロ等準備罪」を可決・成立することが必要だと述べていた。しかしこの法案の中にはテロに照準を合わせた条文はただの一つも含まれていない。それもそのはず、元の共謀罪法案はオリンピック招致ではなく、国連国際組織犯罪防止条約(TOC条約、パレルモ条約とも呼ばれる)への日本の参加を目的に作られたものだったからだ。この条約はテロではなくマフィア対策のための条約だ。テロ対策の諸条約は全く別の体系として作られており、日本は既に国内立法を完備してその全てを締結し終わっている2017/11/16
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