内容説明
元子役という華やかなキャリアをもち、小生意気で目を離せない魅力のあった友人ティンクが、謎の死をとげた。仲良くしていたメリッサやナディアはなかなか立ち直れず、それぞれが学校や家庭で抱える生きづらさにも向き合っていくことになる…。静かな希望と余韻の残る物語。
著者等紹介
オーツ,ジョイス・キャロル[オーツ,ジョイスキャロル] [Oates,Joyce Carol]
1938年、アメリカ、ニューヨーク州生まれ。現代アメリカを代表する作家のひとり。多作で知られ、小説、詩、エッセイ、戯曲などを精力的に執筆している。1970年、『かれら』で全米図書賞受賞。『ブラックウォーター』、『What I Lived for』(未邦訳)、『ブロンド』はピューリッツァー賞最終候補作。2005年、『The Falls』(未邦訳)でフェミナ賞を受賞
神戸万知[ゴウドマチ]
英米文芸翻訳家。工学院大学非常勤講師。ニューヨーク州立大学卒業。白百合女子大学大学院博士課程満期退学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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(C17H26O4)
83
「あのさ、しばらくのあいだみんなと会えないかも。みんな大好きだけど、ちょっと燃えつきちゃった。ま、たいしたことじゃないから。」そうメールに残して手首を切ったティンク。もういない彼女に助けを求めることでどうにか自分を保とうとする女の子たち。生き辛さを抱えて内へ内へと追い込まれる姿が痛々しくて。「あまりに有害な秘密は、友だちと共有できない。共有すべき相手を大切に思っていれば、なおさら…」秘密を吐露できれば何かが変わっただろうか。女の子たちがティンクの気配に助けられて成長したことに希望をみるのは、悲しくて。2019/08/22
星落秋風五丈原
47
イタイ女の子たちを描かせたら天下一品のオーツが送るオムニバス短編集。ティーンだった頃は、「親だって自分達と同じ年で同じ経験をしたことだってあるはずなのに、どうして気持ちをわかってくれないのだろう」と思っていたが、いざ親の年齢になると子供だった頃の気持ちを忘れてしまう。そして、同じように不器用で心がつかめないティーンにどう接していいのかわからない。それなのに、御年70を越えているジョイス・キャロル・オーツが、こうもティーンの心情をリアルに描けるとは驚きだ。2016/05/30
ゆう
13
自分だけではどうしようもできない壁にぶつかり、生きづらさの中で途方にくれる彼女たちのストレートな心の声は、痛みとともに迫る。どんなにうまくやってのけても、人生の気がかりはなくならない。たぶん。そのために友だちがいるんじゃない?いま、ひとりで悩みを抱えている人に。 2015/10/10
遠野
12
己を、世界を、切り裂き滅ぼし壊し尽くすために、どこまでも鋭く尖った薄刃。憎くて、嫌いで、耐えがたいそいつ(ら)に、手酷く不可逆の傷を負わせたい、思い知らせてやりたい。でも、そのやり方を既に選択してしまったティンクが、闘い方にはいろいろあるんだよ、これだけじゃないってことを、呼びかけてくれるなら、自分で探しな、しゃんとしなよって、笑って言ってくれるなら、あるいは。2015/06/26
ぱせり
11
娘たちの自己肯定感の低さに驚くけれど、傍からみたら成功者の彼ら親たちこそ自らを肯定できなくなっているのかもしれない。親たちは上ばかり見過ぎて、ますます渇いてしまっているのではないか、それなのに自分の渇きに気がついていないのではないか。少女たちは文字どおり血を流している。命を絶つしかなかった少女が、生きた少女たちの自立を助けるという事も本当は辛い。 2016/05/09
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