内容説明
両親が離婚したことを気に病むダニエルが、休暇で出会ったのは、いかした女の子レキシー。ダニエルはレキシーに惹かれていくが、彼女には不可解な点があった。腕時計が逆に時を刻んでいる。髪がいつも濡れている。体の傷が増えている…。少年の微妙な心理を描きだす、サスペンス仕立ての青春小説。
著者等紹介
ホーガン,エドワード[ホーガン,エドワード] [Hogan,Edward]
1980年、イギリス、ダービー生まれ。数々の作家を輩出している、イースト・アングリア大学大学院クリエイティヴ・ライティング専攻で学ぶ。デズモンド・エリオット賞受賞のデビュー作『Blackmoor』(2008年、未邦訳)、第2作『The Hunger Trace』(2011年、未邦訳)に続く『バイバイ、サマータイム』は、作者による初めてのヤングアダルト向け作品
安達まみ[アダチマミ]
1956年生まれ。東京大学大学院博士課程満期退学。聖心女子大学英語英文学科教授。英国文学、英国児童文学についての著書や翻訳書を多数手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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seacalf
39
タイトルのサマータイムは、日本では導入されていない標準時刻を進めるあれのこと。このサマータイムを絡めたYA、というよりもファンタジー&サスペンス色の強い、これはちょっと他にはない不思議な雰囲気の物語。主人公の男の子は太っちょだが、いじけてない心根の優しい子。両親の問題を抱えたまま、スポーツレジャーランドに無理矢理連れてこられることによって始まるボーイミーツガール。アル中気味のぽんこつお父さんをはじめとして、登場人物の長所短所の描き方が見事。胸を切なくさせる少年の成長をしばし堪能させて貰った。2017/08/19
星落秋風五丈原
33
父親と共に夏の間リゾートランドにやってきたダニエルは、両親の不仲が自分のせいだと思い込んでいた。母親と浮気相手の決定的な瞬間を見てしまったのは自分であり、父親に問い詰められて答えざるを得なかったからだ。父親は別居中の母親への未練が捨てられず、酒に溺れて息子のフォローなど思いも寄らない。それどころか、リゾート地にやってきた若い女性と一夜を共にして、罰の悪いことに息子に見られてしまう。父親をふがいないと思いつつも「自分のせいでこうなったのでは?」と思えば責めきれないダニエルは17歳の少女レキシーと出会う。2017/08/06
白玉あずき
27
とても魅力的な死人と、肉体的劣等感と罪悪感で傷ついた少年の「ボーイ ミーツ ガール」。ネチネチと恨みがましくない、優しく思いやりのある幽霊さんがとても素敵。なかなか凝った設定で、SF、ミステリー要素もある佳作。「時を駆ける少女」ならぬ「時を繰り返す少女」を成仏?させようと頑張ちゃう少年の成長物語。STAMP BOOKSのシリーズは外れなしで、どれも良い作品ばかり。これからもぼつぼつ読んでいきたいし、周りにもお勧めしたい。2017/02/13
サイバーパンツ
15
少年ダニエルは、ループする時間の煉獄の中に囚われた少女レキシーを救い出すため、歴史を変えようと奔走する。訳者解説にある通り全編を貫く夢幻能の応用とサマータイムのズレを利用した時間ギミックが、一夏の夢の中に取り込まれたような淡いを生んでいて、たいへん良い雰囲気だった。こちらの方が夢幻能の応用がストレートだが、海外版『君の名は。』という感じなので、日本人受けする小説だと思います。おすすめ2017/01/29
DEE
14
サマータイムの一時間のズレの狭間で殺された少女レキシー。普通の人には見えない彼女が見える主人公のダニエル。今も続く殺人の記憶のサークルから彼女を解放するため、ダニエルは勇敢に立ち上がる。 不貞により母親を失い、父親とも上手く馴染めずにいたダニエル。その心の傷のおかげで彼はレキシーを救い、父親に新しい一歩を踏み出させ、自分自身も強くなる。内容としては悲しいが、死者を心に留めながらも彼らは強く生きていくことだろう。2021/01/03