内容説明
中学校入学を目前に、父の故郷、長岡にひとり旅をすることになった哲夫。行きの列車の中から次々と不思議なことが起こります。哲夫は同い年の少女みどりとともに、自分たちを取り巻く大人の様々な過去に向きあうことになりますが…。冬から春へと移りゆく長岡を舞台に、子どもから大人へと成長していく少年の繊細な心を描く、感動のタイム・ファンタジー。「カンバの冒険シリーズ」の作者による清冽な、少年の成長の物語。
著者等紹介
斎藤惇夫[サイトウアツオ]
1940年新潟市生まれ。小学1年より高校卒業まで長岡ですごす。立教大学法学部卒業。福音館書店で長年子どもの本の編集にたずさわる。著作に『グリックの冒険』(児童文学者協会新人賞)、『冒険者たち―ガンバと15ひきの仲間』(国際児童年特別アンデルセン賞優良作品)『ガンバとカワウソの冒険』(野間児童文芸賞、以上岩波書店)などがある
金井田英津子[カナイダエツコ]
1955年群馬県桐生市生まれ。筑波大学大学院修了。国内外で版画作品を発表するかたわら、本の装丁・装画を手がける。長谷川摂子『人形の旅立ち』(第18回赤い鳥さし絵賞、第38回造本装幀コンクール審査員奨励賞、福音館書店)など(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たぬ
31
☆4 大好きなガンバの冒険シリーズの斎藤氏による『カワウソ』以来28年ぶりの文学作品。3人ともなんて重たいものを抱えていたんだろう。現代と過去を行き来しながら少しずつ心の重しが取れていくのが良い。長岡市の風景や古い大きな家の様子がリアルに迫ってきた。沖見おばあさんの言葉が沁みた。2021/08/08
takaC
26
執筆二十八年の大作。男は確実に楽しんで読める。金井田英津子さんの挿画がまたストーリーに絶妙にマッチ。大きな古い家の見取り図に見とれた。2012/01/25
ステビア
15
これはいいなあ。少し地味だが。香るようなみずみずしい文体が素晴らしい。大人が読んだ方が面白いかも。2014/07/25
ぱせり
10
お話は、「いちゃぽーんとさけ」て私たちの背中を押してくれます。それぞれの新しい旅へ。冬の死をはらんだ川・荒れる海も、水が生きているという夏の海や川も、同じ川や海。もっともっとたくさんの表情を持っているに違いないのです。どの海・川も同じように大切に心に刻んで、歩いて行ける旅でありたい、と思います。2011/01/27
ワッピー
8
小学生から中学生になるという特別な春休みに、哲夫は旅だった・・別に行きたくもない父親の実家に向けて。私はガンバシリーズ以来、ずうっとご無沙汰していましたが、あとがきを読むとそのころに書き始められたものとのこと。まったく別の話でありながら歌の使い方にガンバシリーズと同じ懐かしさを感じるのはそのせいかもしれないな。もう一つ感じた懐かしさは、フィリッパ・ピアスの有名な作品と同じテーマを扱い、同じような濃さを持っていることからでしょうか。2010/12/07