内容説明
転校生のアメディオは、ウィリアムといっしょに、風変わりなゼンダー夫人の大邸宅で家財処分の仕事を手伝ううちに、モディリアーニのヌード画を発見する。ところがその絵には、過去から現在にわたる驚くべき真実が隠されていた。
著者等紹介
カニグズバーグ，Ｅ．Ｌ．［カニグズバーグ，Ｅ．Ｌ．］［Ｋｏｎｉｇｓｂｕｒｇ，Ｅ．Ｌ．］
１９３０年、ニューヨーク生まれ。ピッツバーグの大学院で化学を専攻。１９６７年、はじめて出版した『クローディアの秘密』『魔女ジェニファとわたし』がニューベリー賞を競う。以来、おもに思春期の子どもたちの現実を映し出した意欲作を発表しつづけ、現代のアメリカ児童文学を代表する作家として活躍している。１９９６年、『ティーパーティーの謎』で２度目のニューベリー賞を受賞
金原瑞人［カネハラミズヒト］
１９５４年、岡山県生まれ。翻訳家。法政大学教授（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー
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ルピナスさん
58
隣に住むミステリアスな老婦人の引越整理を手伝う2人の冒険好きな少年の興味が、やがて夫人の手元にある一枚の絵から、ヒトラーが行った近代・前衛芸術を弾圧した退廃芸術展へと結びつき、失われた命・救われた命とその家族の話に一気に繋がって行く。自身がユダヤ人であるカニングスバーグ氏が80歳を過ぎて著した作品であり、整理する機会がないとあらゆる物がその存在も価値も忘れられてしまうように、悲しい歴史を埋もれさせないで向き合ってというメッセージだと受け取った。「人の90パーセントは目に見えない」のだから。2022/05/19
星落秋風五丈原
10
一見全く関係のない2つの話が並行して語られアメディオが見つけたヌード画を中心に戦前の話も含めて4つに広がっていく。そしてキャラクター自身も、ウィリアムと母親、彼女の仕事仲間のバートとレイは短編集『影』の「バートとレイ」に登場、アメディオも『スカイラー通り19番地』に登場するジェイクとロレッタの息子でピーターはジェイクの友人、といったように過去作品との繋がりが深い。一般人の感覚からは考えられないような服装をして外出したり尊大とも言える言動によって“変な大人”と見られがちなゼンダ―さんが物語のキ―パーソン。 2014/05/02
春生
7
物語の中の記号が作中で繋がって、広がる。カニグズバーグの過去の作品とも繋がって広がっていく。すごいな。「人の９０％は目に見えないということなの。もっと見えているつもりかもしれないけれど、１０％しか見えていないの。」というゼルダー夫人のセリフが印象に残る。そして、アメディオと一緒に１０％と９０％の境界について考えた。スカイラー通り、クローディアの秘密、読み返そう。2010/03/23
MIO
6
六年生のアメディオは、隣家のゼンダーさんの家財処分をする母親の手伝いをしていたウィリアムに会う。昔は裕福で欧州でオペラ歌手だったゼンダーさんは前時代的な物や服に囲まれて過ごす謎の女性(理想の世界はもう存在しないのね)退廃芸術展の最中独のユダヤ人の亡き父の手記を受けとったピーター。ウィリアムを手伝う中で大戦中に失われたﾓﾃﾞｨﾘｱｰﾆの絵を見つける。都会っ子で何かを発見したいアメディオと、母親とは相棒同士だといい、見つけた物の価値を上げたこともあるウィリアムが、意識し合っていて徐々に理解していくのがいい。2023/02/10
ぱせり
5
物事の一面だけを強調して見ようとすれば、他の面が見えなくなるのではないか、特に目に見えない部分が。それにしても、ウィリアムの「「肩の上の天使に耳を傾けるような」そぶり、なんて素敵な表現なんだろう。2009/01/22
