出版社内容情報
若き森林警備隊員バルナボは、山岳地帯にある火薬庫が盗賊に襲われたとき、怖気づいて岩かげに隠れてしまう。解雇され山を離れたあとも、恥の意識に囚われつづけるバルナボに、やがて名誉挽回のチャンスがおとずれるが……。峰々のそそり立つ美しい自然を舞台に心の苦悩と平安を描きだした、イタリアの人気作家のデビュー作。
内容説明
若き森林警備隊員バルナボは、山の火薬庫が盗賊に襲われたとき、怖気づいて逃げ隠れてしまう…。峰々のそそり立つ美しい大自然を舞台に、恥の意識にとらわれる苦悩と心の平安を描きだした、イタリアの人気作家のデビュー作。中学以上。
著者等紹介
川端則子[カワバタノリコ]
埼玉県生まれ。立教大学ドイツ文学科卒業。日伊協会のほか、フィレンツェ、ヴェネツィアなどでイタリア児童文学とイタリア語の研修を重ねる。第12回いたばし国際絵本翻訳大賞イタリア語部門特別賞受賞
山村浩二[ヤマムラコウジ]
アニメーション作家、絵本作家。『頭山』『カフカ田舎医者』などで、世界4大アニメーション映画祭すべてでグランプリを受賞。東京藝術大学教授、米国アカデミー賞会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
52
森林警備隊員は、いつかはやってくるに違いない山賊に備えて待っている。この「待っている」という行為は、ブッツァーティの代表作『タタール人の砂漠』のテーマにもなっている。「いつ起きるかわからないことを待ち、それが起きたら武勲をあげる」ということは、人生そのものだ。だが、何一つ起きない可能性もあるし、何か起きたときに武勲をあげれない可能性もある。「何一つ起きなかった」のが『タタール人の砂漠』の主人公で、「事件が起きたが武勲をあげれなかった」のがバルナボだ。2025/06/05
はる
48
若き森林警備隊員バルナボは、盗賊に襲われたとき、怖気づいて逃げてしまう。解雇され山を離れたあとも、恥の意識に囚われつづけるバルナボ。だが、やがて名誉挽回のチャンスがおとずれる……。最初の出版は1933年。山岳地帯の美しさと瑞々しい空気の描写が秀逸。主人公の悩み苦しむ姿や親友とのやりとりも緊迫感があり、今読んでも古さを感じさせない。世界観に引き込まれた。2024/09/19
qwer0987
12
内省的な話と感じた。森林警備隊員のバルナボは盗賊の襲撃から逃げたため隊を追われ恥の意識にさいなまれる。友人のベルトンはそんな彼を思いやるけど、一度隊を離れたバルナボは結局隊に居場所はない。宿舎で警備隊がやって来るのを待ち受けていた話には胸を締め付けられた。だがその後、彼は盗賊と対峙し、うまく対処して恥の意識を乗り越える。そこで初めて彼は自分の人生に向き直れたのではないか。そうして彼は疎外された組織から抜け出て、一人の世界で生きるべく山に入る。それは寂しいかもしれないが、前向きな姿に見えた。2024/12/09
ぱせり
7
遠近の山の景観の描写が美しいのだけれど、最後のほうで、バルナボが感じる山が取り立てて素晴らしい。山は、現実にあるけれど、違うものであるのかもしれない。バルナボのように、私たち誰もに、自分の山があるのかもしれない。物語は静か。最初から最後まで静かだ。でも、最初の静けさと最後の静けさはまるっきり違う。2025/06/07
Ernest
4
本を読み始めた頃に、ブッツァーティの短編集を読んで「本って面白い!」と思って以来、特別な作家。夜眠れないときの描写が素敵だった。2025/02/23