内容説明
トロイア攻略後、ギリシア軍の智将オデュッセウスは、故郷の島をめざして地中海の青海原に乗りだす。苦難と冒険の航海は10年におよんだ。故郷では、妻ペーネロペイアに求婚する貴族たちが居座り、悩める息子は父の消息を求めて旅にでる。中学以上。
著者等紹介
ピカード,バーバラ・レオニ[ピカード,バーバラレオニ] [Picard,Barbara Leonie]
1917‐2011。イギリスの児童文学作家。サリー州リッチモンド生まれ。バークシャー州の聖キャサリン校で学び、図書館司書として働く。その間、独学でギリシア語を学ぶ。1949年にデビュー作短編集『人魚のおくりもの』が出版される。歴史フィクション、神話や伝説の再話などでとくによく知られており、数ある執筆作のうち、3作はカーネギー賞候補となった
高杉一郎[タカスギイチロウ]
1908‐2008。静岡県生まれ。東京文理科大学英文科卒業。和光大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェルナーの日記
276
ホメーロスの作として伝承された古代ギリシアの長編叙事詩の1つで『イーリアス』の続編という位置づけになる。トロイア戦争で活躍した英雄オデュッセウスが勝利の後に凱旋する途中に起きた10年間にもおよぶ漂泊を中心に語られている。トロイア戦争に勝利したギリシャ連合軍の武将たちの多くは、その後散々な目に遭っている。アガメムノーンは妻にクリュタイムネーストラーにとその情夫アイギストスによって暗殺され、そしてアガメムノーンの息子オレステースは父の仇をとるが、母殺しの罪によって復讐の女神たちの呪いを受け狂人になってしまう。2019/05/22
buchipanda3
101
古代ギリシャの長編叙事詩、ホメロスの「オデュッセイア」を少年少女向けにアレンジした作品。原作は叙事詩ということで形式張った感じかなと思い、先にこちらを読んでみた。子供向けとはいえ文章は平易過ぎず、大人が読んでも飽きさせないように描かれている。むしろ一つ目の巨人やスキュラと争った場面には容赦ない描写があったり。主人公のオデュッセウス王はトロイア戦争の英雄。戦に勝利していざ故郷の島へ帰ろうとするも途中で幾つもの苦難が。その切っ掛けが彼の安易な言動なので自業自得な面も。とはいえ基本いい人の彼はどうなるか下巻へ。2021/06/20
SOHSA
33
《図書館本》イーリアス物語に続きオデュッセイア物語上巻を読了。タイトルのとおりオデュッセウスが主人公の冒険譚。イーリアスではオデュッセウスはそれほど勇者として描かれていたわけではなかったが、何故か数多いギリシア軍の中の王でオデュッセウスが取り上げられている。イーリアスとオデュッセイアは、一面で日本書紀と古事記のような関係性が見て取れる。オデュッセイアで語られる冒険譚は聞くものの心を巧みに掻き立てる。引き続き下巻へ。2018/08/18
なま
12
★5 『イリアス』のトロイアの戦い(トロイアの木馬)に10年かけて勝利した後、故郷へ帰る叙事詩。ちょうど大学で原文に触れ、意味がわからなくても長母音や二重母音の組み合わせで出来ている音律は心地よかった。それにしても戦いで疲弊する体で魔女や碧眼巨人等、生死に関わる盛りだくさんのエピソードと、その夫を待ちながら故郷で多数の求婚者を知恵を発揮しかわす妻の双方の策略が面白すぎる!2021/05/03
のれん
10
ギリシア文学が誇る名作叙事詩。有名すぎてパロディ作品も多く、読んでなくともなんとなくあらすじは知っている作品。 ただ戦争からの帰還の冒険というのは現在でも少ない題材でこの作品の特異性が見て取れる。 キルケーの呪いがトラウマになりビビりつつも、いざ歓待されると何ヶ月も楽しんで、ふと帰りたいと思う(最初の目的はそうだったわけだけど)とか言い出すのはホント人間味があって笑っちゃう。この展開を考えたホメーロスは天才ではないかと思う。 アルキノオスの歓待で互いを尊敬し称え合うのはここから西洋文化が生まれたんだと驚嘆2019/06/17