内容説明
百人隊長フラビウスといとこのジャスティンは、皇帝の側近アレクトスの裏切りを知り、追われる身となった。二人は地下組織のメンバーとともに、故郷で見つけた「ワシ」を旗印に新皇帝に立ち向かう。ローマン・ブリテン四部作の二作め。中学生以上。
著者等紹介
サトクリフ,ローズマリ[サトクリフ,ローズマリ][Sutcliff,Rosemary]
1920‐92。イギリスの児童文学作家・小説家。2歳の時の病気がもとで歩行困難になり、のちに車いすでの生活を余儀なくされる。14歳で美術学校に入り細密画を学ぶが、1950年ごろから小説を発表する。ローマン・ブリテン三部作『第九軍団のワシ』『銀の枝』『ともしびをかかげて』(1959年カーネギー賞受賞)で、歴史小説家としての地位を確立した
猪熊葉子[イノクマヨウコ]
児童文学者・翻訳家。聖心女子大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
- 評価
-
への六本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェルナーの日記
334
時代は前作よりおよそ100年後、”パクス・ロマーナ”(「ローマの平和」戦争による領土拡張主義により治世し、大ローマ帝国の世界の統一よる平和)は相次ぐ戦争と反乱・鎮圧により、繁栄に陰りが見えてきた時代。大ローマは”東ローマ(ビザンティン帝国)”と”西ローマ”へと2つ割れ、さらに本物語舞台とする西ローマはテトラルキア帝後、4つに割れる(正帝と副帝による統治)。いわゆる”混乱と分裂”の時代にあたる。2017/03/17
NAO
82
『第九軍団のワシ』の続編。ブリテン島の荒廃したローマ建造物で象徴的に描かれているローマ帝国の衰退。それでも、ブリテンの諸民族は、ローマ帝国に謀反を起こした将軍を倒すため、偶然発見されたかつての第九軍団の翼の取れたワシのもとに集まってきた。そして、これは、ローマ帝国の最後の輝きだったのだろう。イギリス人である作者がかつての支配者であるローマ人を英雄扱いし、サクソン人を蛮族と書いているのには少し違和感があるが、解説を読むといろいろと複雑なイギリス人なりの事情があるらしい。【祝・生誕100年ーサトクリフを読む】2019/02/10
たつや
58
ローマブリテン4部作の2作目、ジャスティン達の先祖のルーツが徐々に明かされるワシをヒントに推理?したりするなか、仲間の裏切りによって、逃げるはめになるジャスティン達の最後は涼しげな終わり方が心地よい。本編よりも、訳者あとがきで、グッと来てしまった。悲しい。そして、このシリーズは本の表紙の写真や挿し絵が凄く良いですね。ローマの歴史を全く知らない私は、イメージがつかみやすい。史実をすっかり調べあげたサトクリフの物語に身を委ねることが出来たように思うが、賞を受賞した3作目が楽しみです。2017/03/06
Panzer Leader
43
「第九軍団のワシ」の主人公の子孫達がローマのためというよりブリテンのために立ち上がって圧倒的優位の敵に立ち向かう姿を清々しく描く。物語の初めでは初々しかった主人公達が段々と成長していき、死を賭して戦いに赴く様は読んでいて胸が熱くなる。少年少女向けというよりその頃の純真な心を失ってしまった大人向けの本であるとも言える。2016/04/26
kasim
36
3世紀後半、ローマの東西分割の混乱期にブリタニアの僭帝となったカラウシウスの時代をローマ軍の百人隊長と軍医を主人公に描く。戦乱の時代でも〈小さき人々〉の勇気と誠意によって希望がつながれていく一種の爽快感もあり、サトクリフらしい話。とはいえ、サクソン傭兵の掠奪にさらされる町を守るクライマックスの戦闘場面などは特に今は読んでいてつらい。ローマ人とブリタニア人の二つのアイデンティティ間の揺らぎが、『第九軍団~』と『ともしび~』の間の時代を感じさせる。2022/04/08