出版社内容情報
ヒトラー政権下のドイツ,人々は徐々に反ユダヤの嵐にまきこまれていった,子どもたちさえも…その時代に生き,そして死んでいったユダヤ少年フリードリヒの悲劇の日々を克明に描く.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
rico
126
ヒトラー政権下のドイツ。ユダヤ人である幼馴染のフリードリヒ一家がたどった運命を、一人の少年の視点で描く。良き隣人・職業人であり友である彼らが、次々と権利を剥奪され追い詰められていく理不尽。国家公認の暴力のおぞましさ。手を差し伸べることに躊躇する善意の人々の葛藤。洗脳の場と化した学校。著者は自身の体験に基づき、感情を排して事象の記述に徹することで、ホロコーストに対し、自らも含めて一般人もイノセントではないという事実を容赦なく突き付ける。それがどこでも起き得るということも。読むのが苦しい。でも読むべき1冊。2021/06/29
ちゃちゃ
112
深い哀しみを内包したタイトルが切ない。本作は、ナチス政権下のドイツ、ユダヤ人への非道な迫害をテーマにした児童文学の名作だ。同じアパートに住む幼なじみのフリードリヒ。ユダヤ人であるが故に彼ら一家は理不尽な排斥と攻撃の対象にされてゆく。いわれのない悪意は次第にエスカレートし、母は失意の底で亡くなり父も連行される。攻撃すべき敵を作り排他的な政策を進めることで、絶対的な権力を握る独裁政治の恐怖と狂気。フリードリヒの最期は余りにも痛ましく、愚かしい戦争と差別の歴史を今一度心に深く刻みたいと思う、終戦の日。2021/08/15
モルク
111
今まで共存していたユダヤ人との生活。ナチス政権下でユダヤ人らが次第に権利を奪われ追い詰められていく。ドイツ人の一少年の目を通して親しくしていたユダヤ人家族シュナイダー家とその息子フリードリヒを描く。何が正しく何が間違っているのか、国家権力の号令のもと集団心理も働き、その暴走を止めることができない。ましてやその情況の中で彼らに手を差し伸べることにも躊躇がある。自分達と異なる分子を排除しようとする動きは現代でもある。本書を読んで身を正すことも必要と思う。児童書ではあるが充分な読みごたえがある。2021/09/01
馨
104
学生時代に教科書で読んだ『ベンチ』がもう一度読みたくて探しました。こんな残酷な結末だったなんて…衝撃でした。2012/10/20
あも
101
昨年こう言いました。目標とは達するものではなく超えるものだと。今年も言います。再読にして翻訳。自身の読書の原点となる1冊。小学生の折、塾の全国模試で出会い、探して読んだ思い出深い1冊。ナチス政権下のドイツに暮らす僕とユダヤの少年フリードリヒ。人はいつだって誰かにレッテルを貼って安心したがる。本当に見つめなきゃいけないのは属性なんかではなくその人個人でしかないのに。自分の目で見て判断することを決して忘れてはいけない。読了318/253。翻訳11/10。再読13/12。これにて本年最後の投稿です。よいお年を!2018/12/31