出版社内容情報
丘の上の農場に住むスーザンが,家畜や鳥,虫,花,木,そして風までを友として暮らす田舎の四季を描いた,アトリーの自伝的作品.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
57
のんびりとコーヒーやホットミルクを飲みながら牧歌的な気持ちで読み進めました。日本の田舎とは違うけれど、イギリスの古きよき農場での暮らしぶりが味わえて、心癒されます。叶いませんが、自分は馬車に草や藁をてんこ盛りに積む作業をしてみたいと思う。現代は確かに便利ですが、不便な方が、心優しく、満たされることもあるんだろうなと思える。自然の偉大さも満喫出来た。2017/02/21
はる
55
イギリスの素朴な農家の四季を、幼い少女の視線から描いた牧歌的な物語。「時の旅人」のアリソン・アトリーの自伝的作品です。主人公のスーザンは動物や虫、月や植物、果ては時計や石垣にまで、その魂を感じ、こっそりと言葉を話しかけます。これ、実は私もやってました(笑)。自分の幼い頃と重なります。イギリスの田舎の自然の描写が凄く丁寧で、当時の人たちの生活も興味深い。楽しそうなクリスマスは読んでいるこちらまでワクワクしました。女中さんの恋のエピソードが可愛い。2017/12/25
ぶんこ
41
著者初読みです。カナダにアン、アメリカにローラ、そしてイギリスにもスーザンがいました。生活の場での詳細な描写は、赤毛のアンや丘の家のジェーンを読んだ若かりし頃は夢中になったものですが、今は素直に頭に入ってこなくて、何度も読み直してしまいました。暗闇での、ちょっとしたところから恐いものが出てはこないかとビクビクするシーンでは、自分の幼い頃の同じような恐怖を思い出しました。私の恐怖は都会でのビルや家々の間でしたが、スーザンは自然の木々というのも新鮮でした。時間がかかりましたが楽しい読書となりました。2018/01/31
seacalf
38
間違いなく今年のベスト入り。こんな名作を知らずに未読でいたなんて幸せ。カナダのプリンス・エドワード島にはアン、北米大陸の開拓時代にはローラがいるように、英国ダービーシャーの丘の上の農場にはスーザンがいた。ストーリーで読ませる本ではないので割と時間がかかるが、どうかじっくり腰を据えて読んでほしい。厳しくも潤いのある豊かな農場生活、幸福と信仰心に溢れた暮らしに情景の念が溢れてくること間違いなし。久々に手に余るくらいの満ち足りた読書だった。再読必至。 2017/07/16
シュシュ
27
アリソン・アトリーの自伝的作品。物言わないものたちとも会話ができる子どもの頃。大人たちの世界では、取引先の倒産や、地域社会の中で蔑まれることもあったにも関わらず、スーザンにとって、自然豊かな丘の上の農場でのくらしはとても幸せな日々だった。両親、使用人、アイルランドから来た労働者など、大人たちも魅力的。父親のトムの農夫としての矜持を感じた。「利益はほとんどありませんでした。でも、いばったりどなったりする人々と離れていられるこの高いところの世界には、祝福された平安がありました」いい本だった。2017/08/10