出版社内容情報
美しい女性の姿をした北風に強くひかれた少年ダイヤモンド。北風のうしろにある不思議な世界へいってきて以来、家族や友だちを助けるようになる。
内容説明
北風のうしろの国からもどってきたダイヤモンドは、そこで聞いた小川の歌を口ずさみながら、ロンドンの貧しい暮らしにあえいでいる家族や友だちを助け、励ますようになる。空想と現実を自由にかけめぐる、19世紀イギリスの古典的名作。小学5・6年以上。
著者等紹介
マクドナルド,ジョージ[マクドナルド,ジョージ] [MacDonald,George]
1824‐1905。スコットランド生まれ。『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルなどとともにイギリス児童文学の黄金時代をきずいた作家の一人。サセックスでしばらく牧師をつとめた後、ロンドンに出て文筆生活に入る
脇明子[ワキアキコ]
児童文学者・翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
66
ダイヤモンドは家族のために働き、友達のナニーやジムのために心を砕き、そして歌う。しかし彼らのダイヤモンドに対する評価は、頭のタイルが一枚はがれた神様の赤ちゃん。一人でブナの木の巣で過ごす姿は少し寂しそうだ。「北風の後ろの国に行ってきたこども」とは、天国(善に満ちている場所?)を知っているという意味なのだろうか。ある日久しぶりに北風がやってくる。「どんなものにでも魂が宿っていてそれがなくなったら、何の意味もなくなるし、ちっとも好きにはなれなくなるものよ」哲学的な会話が続く。北風のもうひとつの名前とは・・。→2020/03/15
seacalf
55
美しいものに触れると何故だか泣きたくなるような気持ちになる。それは心の奥底の琴線に触れるからか、上書きしてしまった無垢な心を思い出すからなのか。ダイアモンド少年の活躍を読んでいると、そんな思いに駆られる。病に倒れた父の代わりに辻馬車を操って家計を助けたり、枠物語のヒノヒカリ姫やナニーの夢など読み処は幾つかある。が、上巻にあったような北風と夜空に繰り出すような喜びに溢れた展開は少なく、最後も美しいがやはり物悲しさがつきまとう。ダイヤモンド少年、折に触れて思い出したくなるような忘れがたい登場人物がまた増えた。2022/05/29
Gotoran
42
ロンドンの馬小屋に暮らす少年ダイアモンド。ロンドンの雑踏、活気溢れる街、水溜まりやごみごみした様子。北風が吹き込む馬小屋に暮らすダイアモンドは、人への思いやりがあり、誇りを持って生きている。本書(下巻)では、北風のうしろの不思議な国から戻ったダイアモンドは、健気に辻馬車の御者として働き、産業革命期の生活に疲れたロンドンの人々に優しさを取り戻させていく。・・・最期は、物悲しい雰囲気が漂ってしまう。これが著者マクドナルドの死生観か。2020/01/26
鳩羽
16
父親の仕事を手伝い、母を助け赤ちゃんの世話をしと相変わらず善良な良い子のダイヤモンドは、周囲にもよい影響を与えていく。努力と辛抱は報われ、謙虚で誠実であることの美徳を読むことは、やはり嬉しいものだとも思う。現実世界が充実するに従って北風はあまり出てこなくなり、北風のうしろの国の思い出がダイヤモンドの善良さの根幹のようになっていく。唐突に感じられるラストは、人の世のあれこれや物語に一切頓着しない大きな手のひらに摘み取られたかのようで、ぼうっとしてしまった。2016/03/06
泉のエクセリオン
12
最後の展開は唐突に感じたがルイスの『ナルニア国物語』の最後で子どもたちが、本当のナルニアに旅立つ展開に似てると感じた。ダイヤモンド少年の場合は本当の詩人であり、彼の居場所はこの世ではなく「北風とうしろの国」なのかなと思った。又、作中レイモンドさんの語る「ヒノヒカリ姫」の話は「茨姫」をモチーフにしながらも、月明かりの下に踊るヒノヒカリ姫の描写は本当に美しく詩的であると感じた。トールキンの作品にこういう場面あったなぁと、やっぱり影響を受けているのかなーと思った。 2024/06/29