出版社内容情報
ディックは300年以上も住みついたウィドフォード屋敷を深く愛し,屋敷に伝わる宝をしっかり守っている.ある夜,魔女がディックに挑戦してきた…….民俗学の第一人者によるユニークな妖精物語.
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
97
傑作です!堪能しました。今までこの本を知らなかったのが不思議。 17c半ば、清教徒革命後の英国、コッツウォルドが舞台。 家付き妖精のディックが活躍します。 映画で情けないイメージついちゃったけど、見える子には”小さな黒いおじさん” 作者は英国民俗学の大家。2021/01/09
アナーキー靴下
86
舞台は17世紀イギリス。妖精や魔女が暮らしに息づく物語は、民俗学に触れているようなしっかりしたものでありながら全く堅苦しさがない。妖精ディックは家の守り神的な存在だが、善き人間に法外な幸運をくれるわけでも、意地悪な人間に大仰な罰を下すのでもない。日々の苦労は生きる上で当然の困難、大きな災難に見舞われないことが感謝すべき恵み、といった謙虚さが物語とディックの存在に通低し、穏やかな気持ちになる。愛や幸福は常に存在していて、何かの折にかけがえないものとして意識される、その瞬間が鮮やかに描かれ胸を打たれる。傑作。2021/10/04
さつき
65
『世界の児童文学をめぐる旅』に触発されて。この本を読むまでは家付き妖精というとハリーポッターのドビーしか知りませんでした。ボバディ・ディックの事を知っていたら、もっとハリポタのドビーの特異性もわかるんだなぁと発見がありました。ウィドフォード屋敷と、そこに縁のあるアン、そして新しい主人の息子ジョエルへのディックの献身に目を見張る思いです。妖精に好かれる人、嫌われる人の違いが顕著で嫌われる人には少し同情もしてしまいます。2024/01/15
帽子を編みます
57
これはすごい!子ども向けの本ながら、17世紀イギリスの雰囲気がわかります。王党派と清教徒とのぎこちない付き合い、家柄は正しいが没落していく土着地主と成り上がりの商売人との関係、教会の正当な行事と伝承の民間行事、いくつもの対立する事柄をごく自然に取り込んでいます。クリスマス、イースター、五月祭、邪悪な魔女などの描写。ホバディ・ディックが家を守るためにとる行動、いじましくて応援してしまいます。大好きな二人のために精一杯の振る舞いをし、最高の結末を迎えます。そしてディックは赤い服を選び自由な身となります。2021/04/25
seacalf
57
マイナーだけど思わぬ掘り出し物に出会えるのが読メの良いところ。17世紀のイギリス、コッツウォルズ地方の古い屋敷が舞台。妖精ディックが屋敷内を八面六臂の大活躍。何事も簡素にする清教徒のご主人を尻目に屋敷の面々が密かに集まってクリスマスパーティーを行う愉快な場面を筆頭に、古い習慣やまじないの数々が紹介されていてこれも見処。作者は民俗学と妖精研究の第一人者なので時代考証もしっかりしている。物語の楽しい要素がたっぷり詰まっているので読書の醍醐味を思う存分味わえる。束の間、現実を忘れて楽しい物語に浸ることが出来た。2021/02/03
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