出版社内容情報
親友エンキドゥを死に奪われたギルガメシュ王は,死を滅ぼし,永遠の命の秘密を得ようと,長く苦しい旅にでる.はたしてその秘密を手にすることができるのか? ギルガメシュ王の物語三部作完結.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
240
ギルガメシュ3部作の完結編。前巻で予告されていたギルガメシュの死の超克への旅が描かれる。ここにも旧約聖書のノアの箱舟とそっくりの洪水伝説が語られていることは、いろんな意味で興味深い。こうした洪水伝説は世界中に遍在するようなのだが、太陽の存在とともに、大きな意味での「死と再生」といった人類史に永遠のテーマを語るものなのだろう。5000年近くも前のギルガメシュ叙事詩―それは形あるものとしての「ウルのスタンダード」(大英博物館所蔵)とともに、文明の曙光を現代に語り伝える貴重な伝承の宝物ともいうべきものであろう。2015/06/01
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
78
川が海に注ぎ込む地の果てで倒れた男。エンキドゥとシャマトを連れていってしまった死に打ち勝つため、永遠の命を求める旅に出たギルガメシュだった。シャマトの魂に励まされ、立ち上がった王は、道中助けた若いライオンと太陽神のもとに辿り着く。しかし、彼が求める答えを持っているのは、神ではなく〈箱舟〉の生き残りであるウトナピシュティムだった。困難の末、ギルガメシュが得たものは……。世界最古の物語、ついにクライマックス。2015/05/09
アナーキー靴下
74
「死」に打ち勝つために長く苦しい旅を続けるギルガメシュ。最初から最後まで琴線に触れ続ける物語だ。死はあらゆる生命が内に持つ詐欺師。恐怖を煽り、時間制限を設け、提示した選択肢を掴ませる。生きることそのものが詐欺師の手の内、降りることのできない死の舞踏だが、そこに誰かがいてくれるなら、決して無価値ではない。「ギルガメシュよ。ここに、きみのもとめた永遠の命がある」それにしても「若さをさずける草」はいったい何なのだろう。死と再生、のイメージかなと思うけれど、使わずじまいのキーアイテムみたいで気になってしまう。2021/04/29
ちえ
43
5000年以上前にメソポタミアで粘土板に記された世界最古の抒情詩であるギルガメシュ抒情詩三部作の最終章。一部、二部、三部と壮大になる物語。途中で助けたライオンを連れて死に打ち勝つための旅をするギルガメシュ。様々な困難を乗り越え、持ち帰ろうとしたもの。しかし復讐の念に取り憑かれたイシュタールのおかげで得たものを失ったギルガメシュに親友エンキドゥが見せたものは。人間の本質を付く物語は、文学、音楽、今ならばゲーム等のストーリーに通じるものがあるかなぁ。最後の絵は壮大、途中の場面は禍々しい。2022/08/09
chiaki
42
世界最古の物語のひとつ『ギルガメシュ叙事詩』から。メソポタミアの人々は、地獄と呼ばれる恐ろしい場所を語った最初の人々なのだそう。ギルガメシュが永遠の命の秘密を求めて越えようとした死の海は、まさにそんな地獄のよう。幾多の苦難を乗り越えて、亡き友エンキドゥとシャマトの力を借りながら、“永遠”の意味に辿り着くラストに胸が熱くなった。数々の英雄譚の起源とも言えるギルガメシュの熱き姿、5千年の時を経て今尚語り継がれる所以に納得!!また読み返したい。2021/07/19