出版社内容情報
多くの民族と宗教が混在する古都ダマスカス.混乱のつづくこの都市で,自分の感性を大切にして生きようと決心し,ジャーナリストをめざす一少年の日記.注目をあびているシリア人作家の自伝的作品.
内容説明
政情不安がつづくシリアの首都ダマスカスで、紙とペンで権力にたちむかおうと、ジャーナリストへの道を模索する少年の日記。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
NAO
59
作者が少年だった60年代のダマスカスを舞台とした自伝的小説。ダマスカスは、各宗教各宗派ごとに居住区が分かれている。政情が不安定でほぼ一年ごとに軍事クーデターが起こるシリアの象徴として、主人公の恋人の父親が描かれている。この父親は秘密諜報機関に所属しており、どんなに政権が変わっても新しい政権のために彼らと対立する者たちを摘発するというとんでもない人物だ。主人公は詩を書いていたが、新聞記者に憧れるようになり、政府のいいなりでしかない新聞に嫌気がさして本当のことを伝える新聞を作ることを決意する。⇒2023/05/12
吟遊
11
シリア出身、ドイツ語でベストセラー作家となったラフィク・シャーミー。児童文学としてダマスカスの日常を綴った本作。主人公の少年は記憶のなかの自分でもあり、当時の社会的な要素を詰め込んだ架空の人物でもあるらしい。主要な登場人物である、主人公と親友のマハムート、恋人のナディア、大事な友達のサリームじいさんのあいだに「葛藤」がほとんどないのが気に掛かる。彼らは結局のところ生きたいように生きており、物語は淡々と進行し、起承転結や波がない。ただ、シリアの60年代の政治状況が反映されているところにはリアリティを感じる。2017/02/26
relaxopenenjoy
7
シリア ダマスカスの旧市街のキリスト教地区に住む、「ぼく」の日記。ぼくは、パン屋の息子で、学校をやめた後は父のパン屋を手伝い、本屋で働き、詩を書き、仲間とくつした新聞を始める。友達(サリームじいさんやマハムート)、家族、ガールフレンド、元新聞記者らと過ごす日々の中での様子が活き活きしている。設定となっている1960年代のシリアは、クーデタが頻繁に起こったり、弾圧されたり、政府側協力者が密告したり、自由が統制されていた。フィクションだけど自伝的小説とのこと。シャミは、シリア出身の作家でドイツへ移住。2021/12/28
ぱせり
7
作者の自伝的色彩の濃い作品とのこと。時代は1960年代のはじめごろ、政情不安定なダマスカス。「ぼく」の、揺らぐことない言葉への信頼には励まされる。その大元のところに素晴らしい友人たちがいる。タイトルの「片手いっぱいの星」って、友だちと言葉のことではないかしら。片手いっぱいの星は、どの星も明るく輝く。手の星を掲げて、暗がりで「ぼく」は道を探す。 2018/06/23
一葉
2
シリア・ダマスカスに住むパン屋の息子が新聞記者になりたいと思い、14歳から17歳まで書いていたという体裁の日記形式の物語。中東のイスラム教の国という以外はどういう国かイメージがなかったが、情勢不安定でクーデターが何回も起こったり、お父さんに学校を辞めさせられたりお母さんがバザールで商人相手に上手に値切ったり。観光客や将校の振る舞いにいけ好かない思いを抱いたり。 1960〜70年代に確かにこういう子どもたちが住んでいたのだろう。イスラム教の国でも結婚前の男女交際に割と寛容なのだなと思った。2019/09/22
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