出版社内容情報
私はその人を「先生」と呼び慕った――。孤独なふたりの真面目で懐かしい交流を描き、過ぎゆく明治の時代精神への挽歌を重ねた、静かな語りかけ。
内容説明
「私は今あなたの前に打ち明ける」先生と私―孤独な二人の真面目で懐かしい交流を描き、明治の時代精神への挽歌を重ねた静かな語りかけ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
たつや
57
漱石でどの作品が好きかと問われれば、迷わず「こころ」と答えている。ただ、「明暗」等、読んではいるが完全に把握してるわけでない作品もあるので、偉そうなことは言えない。でも、こころの遺書を使った構成が上手いと思える部分や主人公の葛藤など、新聞に連載してたのか?という当時の雰囲気等、いろいろ感じ、考えることが多い。名作だと思える。2017/10/11
ぐうぐう
35
教科書に掲載の抜粋で、初めて『こころ』に出会った読者も多いはず。俺もその例に漏れずで、恥ずかしながら今回、全集で初めて全文を読んだ。『心 先生の遺書』と副題が付いていることも、「先生と私」「両親と私」「先生と遺書」の三章からなる構成なのも、初めて知った。『心』のテーマをひとことで言うなら、明治という時代精神の死(正確には殉死)、ということになるのだろう。明治という時代へのこだわりは、これまでの漱石の小説で描かれてきたテーマでもあるが、『心』ではそれがより際立ち、切実さを伴っている。(つづく)2017/09/28
テツ
29
漱石から一冊選べと言われたら『こころ』を選ぶ。自らが犯した過ち(客観的に見たらそれは悪と言い切れないとしても)に捕らわれ一歩も進むことが出来ずただただ人生を浪費する先生。そしてそんな先生に近寄り教えを請おうとした私に対して自分という人間の全てを余すことなく曝け出した後に自らの生命を断つという決着のつけかた。先生のこころとはなんだったのか。何故自分も含めた全ての人間が幸福になれない道を選んでしまったのか。もし私がもう一度先生に出会えたのなら何と言葉をかけるのか。何度読み返しても飽きない。2018/05/11
マカロニ マカロン
8
個人の感想です:A-。『こゝろ』をよんだのは3回目。1度目は高校生の時、大学受験で出るかもしれないと読み始めたが、内容はピンとこなかった。2度目は大学生の時、周りに下宿している友達がいたり、色んな恋愛事情があったりして、とても共感を覚えた半面、時代背景など理解できないことも多かったことを覚えている。今回それから40年以上経過し3度目。全集で読むと、注解が充実していてとても面白く読めた。乃木大将の殉死がかなり濃厚に本作に影響していることが、とてもよく理解できた。2018/12/06
鯉二郎
3
「こころ」は文庫本で3回読んだが、全集を買って「心」を読んだのは初めて。やはり全集は文字が大きく、行間にゆとりがあり読みやすい。それに注解と図解も充実しており、これまで気に留めなかった語句にも深い意味があることを知った。4度目となる今回も、読めば読むほど人間の心はわかりそうでわからないものだと思う。若い頃、嫉妬、自己矛盾、葛藤の塊のようだった先生の言動は、程度の差はあっても誰でも思い当たる事ではないだろうか。心の実態がつかめない時こそ、洞察に深い漱石の「心」を手に取ってじっくり読んでみたい。2017/09/13