出版社内容情報
近代哲学の基盤である批判哲学を確立し,ギリシア以来のあらゆる哲学的課題を論じつくしたカント.世紀末といわれ未曾有の転換期を生きつつある今日,それらの著作から汲み取るべきものはあまりにも多い.講義録・書簡を含むその全著作を,国際的水準にある日本のカント研究者の参加を得て全編新訳で刊行する決定版全集.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てれまこし
2
アンソロポロジーと名づけられるているが、カントのそれは人類学とはちがう。今日「文化」と呼ばれるようなものが欠けている。書物から与えられる人間知が信頼できなければ、それは旅か内省を通じてしか得られない。旅をしなかったカントの「人類学」は主に内省を通じて得られた知に基づく。あらかじめこの知を得てから観察しないと、旅での観察も知とならない。しかし、主観と客観の関係をとことんまで突き詰めたカント哲学には、多数の人間に共有された表象という第三の領域が欠落している。個人の自由にも自然にも還元されない社会という領域が。2018/07/12