出版社内容情報
「茶碗の湯」「鳶と油揚」をはじめ,寺田作品のなかでももっとも親しまれた科学随筆を中心に収録.金米糖や線香花火への着眼,電車の混雑の分析など,日常の現象から自然の神秘に迫る寺田物理学の真骨頂が味わえる.
内容説明
日常や自然に対する繊細で温かな観察眼、「科学者の随筆家」寅彦の真骨頂。「茶碗の湯」「鳶と油揚」をはじめ、寅彦の作品のなかでも最も親しまれている科学随筆を中心に収録する。
目次
1(茶碗の湯;電車の混雑について;怪異考;化物の進化;日常身辺の物理的諸問題;家庭の人;人魂の一つの場合;鳶と油揚;疑問と空想)
2(小さな出来事;芝刈;春六題;蓑虫と蜘蛛;蜂が団子をこしらえる話;鼠と猫;子猫;池;備忘録;北氷洋の氷の破れる音;鉛をかじる虫;藤の実;猿の顔;ある探偵事件;藤棚の蔭から;家鴨と猿;五月の唯物観;小浅間;小爆発二件)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Kaorie
5
誰もが抱くけれど、深く考えもしない疑問を、分かりやすく分析し、分かりやすく短い文章で書く。科学というのはこういう小さな疑問から始まるのだろうなと思う。寺田さんが学生時代に科学の先生だったら、間違いなく科学好きになってたいただろうな。寺田さんの飼っていた猫の話もほのぼのしていて面白かった。2013/05/15
nrm
2
『茶碗の湯』を薦められて読んだ。茶碗から立ち上る湯気が積乱雲になり低気圧になっていく様子をまざまざと見せられた。他にも、冬に凍る窓の凍りかたや朝顔を洗う時に洗面器とコップの水の共鳴、さらには火の玉や怪異の科学的な考察などなど、日常にあるちょっとしたことが、科学研究の端緒になることが、よくわかる。(科学論の面は素人なのでわからないが)80年以上も前に書かれた随筆だけどいま読んでもすごく新鮮に感じる。2010/03/22
Ted
1
'97年1月刊。○テーマは「自然」。「茶碗の湯」「鳶と油揚げ」「電車の混雑について」などの有名な随筆を所収。「鳶と油揚げ」では巻末の解説で、動物学者の日高敏隆に問合せたところ、鳥の目は特殊な構造を持っているため、嗅覚ではなく視覚で捉えているという否定的な見解を述べているが本当だろうか?詳細までは書かれていないので何とも言えないが、鳶が主に動物の死骸を餌にしている点や輪を描くように飛んでいる点、また動物学ではなく物理学的アプローチから考えると寅彦の推論の方が正しいように思うのだが。2019/08/13
いちはじめ
1
この巻では、僕が寺田寅彦を好きになるきっかけとなった「電車の混雑について」などが収録。日常に潜む謎に注意を向けさせ、科学する心とはどういうものか教えてくれる気がする2010/01/17