出版社内容情報
漱石のロマンチシズムがほとばしり出た『倫敦塔』以下の初期短編7編と,痛快さのなかに織り込まれた哀愁が読むものの心に懐かしい余韻を残す名作『坊っちやん』.新知見を取り入れ,さらに充実した注解で贈る.
内容説明
漱石の浪漫趣味が横溢する『倫敦塔』以下の短編七編と、痛快さのなかに織り込まれたあわい哀愁が読むものの心に懐かしい余韻を残す名作『坊っちゃん』。新知見を取り入れ注解を増補し、『坊っちやん』では原稿段階の推敲過程を明らかにする一覧表を新たに付す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゲオルギオ・ハーン
24
『坊っちゃん』を含む7作品を収録した全集。『坊っちゃん』は教科書で読んだ時は主人公に快活なイメージを持っていたが、今回読んでみて内弁慶というか青臭い印象を強く持った。というのも、他の人々との交流が一方的(相手への理解はない)で子供っぽさを感じ、第一印象の持ち方も尊大だ。23歳くらいだとそんなもんかと自分が社会人成り立ての頃をふと思い出してしまった。心の中では雄弁だが、人前だと何が言いたいのか分からなくなるあたりもけっこう共感したくなる。主人公をどう思うかで作品の印象が大きく変わるので奥深い作品だと思った。2022/04/01
風に吹かれて
19
大岡昇平だったと思うが漱石的作品を「文(ぶん)」と言っていた。漱石は徘徊趣味とか写生文とか言われるが、いかなる定義にも縛られない「文」と考えると、『倫敦塔』をはじめとする『漾虚集』に収められている作品は読みやすい。柄谷行人の漱石論を再読していたこともあって、『漾虚集』を写生文あるいは「文」と思って読むことで面白く読めた。三人の人物が登場する『一夜』に漱石は書いている、「…三人の言動動作を通じて一貫した事件が発展せぬ? 人生を書いたので小説をかいたのではないから仕方がない。」(p142) ➡2021/03/10
お茶
6
坊っちゃん、倫敦塔、カーライル博物館の3作品だけ読了。坊っちゃんは大人になって読むのは初めてだと思う。斎藤美奈子さんの『文庫解説ワンダーランド』を読んだ直後なので、種々の解説に影響されながら読んだ。明快だが単純すぎる坊っちゃんの行動原理に感情移入はできなかったが、そういう読みもあっていいのだということ。漱石がなぜこういう人間像を作ってみたのかは気になるところ。2017/02/12
悠々人
1
坊っちやんを、久し振りにじっくり読みました。何回目かな。 やはり、文章のリズムが良いですね。この小説を、痛快小説と読むのか哀切小説と読むかは難しいですね。最後は、ちょっと哀しいかな。 それにしても、漱石は松山をボロクソに描いていますね。2017/09/16
ユミ
0
まあまあ。「坊っちやん」初めて読みました。やはり私の苦手な仮名遣い。でもべらんめえ調を音読するとリズミカルでよいものです。内容は・・一言でいえば「お坊っちゃん」の話。2016/05/26