出版社内容情報
格調高い雄篇4つを収録.自由への賛歌である「縛られたプロメーテウス」の反抗,歴史に取材した雄渾壮大な「ペルサイ」,様式美の極致である「テーバイを攻める7人の将軍」,嘆願劇の全貌を示す「ヒケティデス」.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
fseigojp
21
いわゆるオイディプスからアンティゴネ―をつなぐ『テーベ攻めの7将』 このあとエウリピデスの嘆願する女たちにも連関2017/04/28
風に吹かれて
19
本書にはアイスキュロス(紀元前525ー456)の悲劇がおさめられている。メアリー・ウルストンクラフト・ゴドウィン・シェリー(1797-1851)の『アインシュタイン、あるいは現代のプロメテウス』からメアリーの夫のパーシー・ビッシュ・シェリー(1792-1822)の『鎖を解かれたプロメテウス』にいこうと思っていたらアイスキュロスを読んでおくべきという知見に接し本書を読んだ。『縛られたプロメーテウス』。プロメーテウスは人間に「思慮を授け、知を持たせ」た。人間に与えるためにゼウスから火を盗んだりもした。 →2022/12/27
はる
6
2作目ペルサイを読む。479年プラタイア戦に破れ6年後大ディオニス祭で上演されたとされた作品。数に物言わせギリシア侵略を謀ったクセルクセスの敗走を知る王母アトッサと亡霊ダレイオスの嘆きが人の親の苦しみと狼狽の言葉で語られる。2600キロを7日で伝令する力を持つ国母にアテナイとは何処?その軍勢はペルシアを凌ぐのか?と問わせる。既にギリシア全土に覇権を及ぼすに至るアテナイ市民は、敗北した異民族の味わう不幸を劇の中で追体験したのだろうか。アイスキュロスもこれらペルシア戦争の幾つかの戦場を経験したという。2025/07/18
はる
5
3作目テーバイを攻める七人の将軍を読む。3年ほど前に文庫で読んでいたが、今回はアイスキュロス作品集の一つとした読む。テーバイ建国の祖カドモス家に纏わる呪の連鎖、兄弟が血を血で洗う相続争いの話だが、見せ所が何処で、観客を惹きつける効果的演出が出来たのかという視点から読む。都市城塞を取り囲み怒声と雨霰の投石の音の中で、7つの門に名のある手練れの将を配置してゆく敵方のスピード感に慄く市民たちから我を喪失してゆく姿がコロスに表現される。呪の伝説の姿を観客は握り拳に汗して見観たのかもしれない。→2025/07/19
吉岡
5
[古典ギリシアにおけるサタン主義] 縛られたプロメテウスをオリンポスからの追放、つまり、落ちる→堕ちると見る。 追放されて、堕ち、かつての輝きを失たが故に、むしろ気高さが顕著になる。 これはミルトンが大いに貢献したサタン主義と繋がる。 プロメテウスは暴君に、そして、サタンは神の御子に忠誠を誓わなかった気高き存在。これがロマン主義の宿命の男へと連綿と繋がれていくのだろう。2014/10/05